初めて会った日
蓮華と百合華は母、沙月と父、勝也に連れられて工藤邸へと来ていた。
「あら、この子が沙月の娘の子たち!?」
「そうよ!可愛いでしょ〜!!」
キャッキャッと騒ぐ有希子と沙月に対し、勝也と手を繋いでいる蓮華と百合華はきょとんとした目で有希子を見上げていた。
『おとうさん、ここおかあさんのお友だちの家?』
蓮華が勝也を見上げながらそう言うと勝也はははっ!と笑いながら頷いた。
そしていまだに騒いでいる沙月と有希子に声をかける。
「おい、二人が戸惑ってるだろ?いい加減中に入ろうぜ」
「勝也の言う通りだぞ、有希子」
玄関で話していた沙月と有希子にため息混じりにそう言うと勝也の後に、リビングから出てきた優作がにこやかに笑って言った。
ハッとした二人が謝り、リビングに入ると一人の男の子がソファに座っていた。
その姿を見て、沙月がキラキラとした眼差しで声をあげる。
「きゃあっ!新一君ね!?やだぁ、可愛い子じゃない!!」
「そうでしょー!?」
またもキャッキャッと盛り上がる二人に優作と勝也が顔を見合わせて、仕方ないと言う風に笑った。
「相変わらずだな、有希子のやつ」
「沙月もね」
蓮華と百合華がきょとんとしているとソファに座っていた新一が本を置いて二人に駆け寄ってきた。
「おめーらが蓮華と百合華?」
『う、うん』
戸惑いながら蓮華が頷く隣で百合華が蓮華の服の袖をぎゅっと握る。
すると新一はニカッと笑って手を出した。
「おれ、新一って言うんだ。よろしくな」
差し出された手を見た蓮華がパアァッと笑顔を見せる。
『よろしくね、新一君!』
沙月譲りのマジックで「はい!これあげる!!」とお菓子をあげる蓮華の笑顔を、新一は頬を赤く染めながらじっと見つめた。
そして我に返ったように首を横に振って、今度は目をキラキラさせて蓮華を見る。
「すげぇ!マジックできんのか?」
『うん!百合華もできるよ?ほら、百合華』
『う、うん···』
蓮華に促されておずおずとマジックを披露した。
目を輝かせる新一と笑顔でマジックをする蓮華とぎこちないながらもたどたどしくマジックをする百合華の姿を見た沙月たちは顔を見合わせて微笑みあった。
「新ちゃんたち、仲良くなったみたいね!」
「ふふっ、そうね」
「蓮華と百合華の奴、またマジックがうまくなったみてぇだな」
「沙月の指導の賜物だろ?」
そんな沙月たちの会話なんか知らずに、蓮華と百合華と新一はずっと楽しそうに話していた。
蘭と園子は久しぶりに会った百合華からその頃の事を聞いて顔を見合わせた。
蓮華と新一は頼んだものを取りに行っており、ここにはいない。
「へぇ、蓮華と新一と百合華ってそんな出会いだったんだ」
『あれ、蘭に言ったことなかったか?』
「聞こうとしても新一が教えてくれないのよ」
紅茶を一口飲む蘭の隣で園子は百合華の方へと身を乗り出した。
「てことは、新一君はその時から蓮華に惚れてたってことね!」
自信満々に言う園子に蘭はきょとんとした目を向けた。
「どうしてそう思うのよ、園子」
「聞いてればわかるでしょ!?新一君はぜーったいその時の蓮華の笑顔に惚れたのよ!」
「えぇ〜そうかな?」
「そうよ!」
わいわいと騒ぐ蘭と園子に百合華はクスッと笑みを浮かべて頬杖をつくと笑い合いながら戻ってくる新一と蓮華を見つめた。
『そうかもしんないな···』
新一はあのときから蓮華のことが───。
『ねぇ、やっぱり私が持つよ?新一』
「大丈夫だって言ってんだろ?オメー、本当に頑固だな」
『何よー!全部持たせるのは悪いなぁと思った私の気遣いじゃない!』
「······気遣い、ねぇ。のわりには一番重てぇやつをオレに渡してきたけどな」
『あ···いや、それはその〜』
百合華はそんな蓮華と新一の様子を見ながら窓から見える空を見上げた。
出会ったあの日から、恋ははじまったのだ。
はじめて出会った日
お互いが恋に落ちたのが同じ日なんて······なんて奇跡なんだろう