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バスターコール

自分の体を動かす揺れに気づいたカナがゆっくりと目を開けた。


「······ウソップ······?」
「おお······ハァ······ハァ······起きたか、カナ······」


カナの体が悲鳴をあげる。
バレットとの対決で、ほとんど魔力は残っていなかった。
それでも、力をかき集めて、立ち上がる。


「ハァ······悪ィ、カナ······ハァ······ハァ······ティアナ、持ってもらってもいいか······?」
「うん······」


ボロボロになったルフィとティアナを、ボロボロの姿をしたウソップが担いでいた。
ルフィとティアナには意識はなく、ウソップに右肩と左肩をかつがれたまま、左手と右手はダラリと垂れさがっていた。
体が限界を迎えているが、カナもウソップからティアナを受けとる。


「無事だったんだ······ハァ······」
「当たり前だろ······ハァ······ハァ······見たかルフィ、ティアナ······あの野郎、おれの迫力にしっぽ巻いて逃げだしやがった······ハァ······今日のところは······ハァ······見逃してやろうぜ······」


ウソップの方も満身創痍で、ほとんど足を引きずりながら歩いていた。
そんな足が、地面のなんでもないでっぱりに引っかかり、ウソップがバランスを崩した。
ろくに受け身も取れず、「ドサッ」と倒れるウソップ。彼もまた、限界はとっくに超えているようだった。


「ウソップ······」


カナも体力の限界がきて、足から崩れ落ちた。


「フー······フー······フー······だから死ぬな······ルフィ······ティアナ······ハァ······ハァ······まだ“海賊王”になってねェ······」
「そうだよ、ティアナ······ルフィが“海賊王”になるところ······ハァ······見るんでしょ······」


ウソップとカナははいずりながら、いっしょに倒れたルフィとティアナに話しかける。
うつぶせになったルフィとティアナの体から、ジワリと血が流れでてくる。
かなり危険な状態だ。


「おれだちの冒険は······ごんなどころで······終わらねェ!!」


ウソップの頭には仲間たちと過ごした毎日がフラッシュバックしていた。

安全とはほど遠い、危険だらけの冒険。しかし、毎日が刺激的で楽しかったし、どんな困難も仲間とともに乗りこえてきた。今回だってきっとそうなる。“海賊王”と、そのクルーになった後に一つの思い出として語れる日がきっとくるのだ。


「ハァ······ハァ······」


気力を総動員し、ウソップが体を起こした。
そんなウソップとそれを見上げるカナの耳に、「バキバキバキ」と建物が倒壊する音が聞こえてきた。
炎に包まれた柱が、ゆっくりと倒れかかってくる。このままだとルフィとティアナが下敷きになる。


「終わっていいわけ······ねェんだ!」


両腕と頭で「ズシン!」と柱を受け止めたウソップは、重さと熱さに耐えて叫んだ。


「ルフィは······海賊王になる男だ!······ティアナは······おれたちの希望なんだ!」


そして最大限の力を込めて、柱を脇へと反らした。
柱は「ゴン!」と脇に倒れ、なんとか助かったウソップだったが、力を使い果たしたのか自分もその場に倒れてしまった。


「ウソップ······」


息も絶え絶えにカナがウソップを見る。

自分に力がもっとあれば、こんな火なんて食って今すぐここから脱出できるのに···と動かない体に、悔しさが募る。


バキバキバキバキ!


柱が倒れてバランスが崩れたのか、今度は大きなガレキの山が崩れそうになっていた。
憎らしそうに、そのガレキをにらみつけるウソップとカナ。

気力は微塵も萎えていないが、体がまったく動かない。

その間もガレキは、倒壊までのカウントダウンのようにバキバキ音をたてていた。

もはや時間はない。

ウソップとカナの目が悲痛にゆがんだ、そのときだった。


「黄泉の冷気“魂の喪剣ソウル・ソリッド”!」


バキッ!


倒壊しかけていたガレキが、一瞬にして氷漬けになった。
ブルックの剣技で、ガレキが凍ったのだ。


「ウソップ〜!カナ〜!大丈夫か!!」


大あわてで駆けてきたのはチョッパーだ。
スモーカーが消えたあとに、バスターコール発動の危機を伝えるため、ルフィとティアナとウソップとカナを探していたのだ。
船医であるチョッパーは、ウソップとカナの姿を一目見るなり顔を青ざめさせた。


「ひどい······急いで手当を!」


救急箱に手を伸ばしたチョッパーだったが、その手をウソップとカナが「ガシッ」とつかむ。


「え?」
「······早ぐ······ルブィどティアナを······ぢを流しずぎでんだ······」
「でもウソップ、お前も───」
「お願い······!」


鬼気迫る表情で懇願するウソップとカナを見て、チョッパーは覚悟を決めた。


「······わかった!」


悩んでいる時間がもったいない。

ルフィとティアナを急いで治療して、すぐにウソップとカナの治療にとりかかればいいのだ。皆の仲間になったときに、なんでも治せる医者になると誓ったのだ。それぐらいのことはできて当然だ。

チョッパーは細心の注意を払いながらも、急いでルフィとティアナの治療にとりかかるのだった。

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