バレットVS最悪の世代
ティアナとカナの手首にあるブレスレットがシャランッと綺麗な音を立てるのを合図に、ルフィは帽子をかぶり直した。
バレットが笑うとルフィはコブシを「ボキボキ」と鳴らす。
「お前ら!邪魔すんな!」
「あいつの次はテメェだァ!麦わら!」
最悪の世代に向けて言うルフィの言葉にキッドは言い返した。
「相性最悪だな、こいつら」
『そんなもんでしょ』
チラリとルフィとキッドを見てカナとティアナがつぶやく。
「来ねぇなら行くぞ」
バレットは真っすぐにルフィに向かって来た。
ルフィも肉体から蒸気を噴き出して、“武装色の覇気”を纏い、応戦する。
ぶつかり合った拳と拳。
だが圧されているのはルフィだった。
バレットのコブシに、ルフィが地面へと押しつぶされる。
「『ルフィ!』」
一瞬の出来事にティアナとカナが目を見開く。
ルフィの方に気を取られていたティアナとカナの目の前に瞬時に現れたバレットは、そのコブシを二人の腹へと叩きこんだ。
「『ぐはっ!』」
ルフィとティアナとカナが一瞬でやられた事にキッドとキラーが驚くと、彼らの目の前にはすでにバレットがいた。そのまま二人の頭を掴み、頭突きあわせる。そしてドレークの顔面へとコブシを入れ、ウルージの腹へもコブシを叩きこむ。
一瞬でやられる最悪の世代。
バレットの後ろでホーキンスが動いた。能力を発動するホーキンスに、最悪の世代とティアナとカナが一斉にバレットから飛びのく。
「降魔の相」
悪魔の実“ワラワラの実”の能力者、ホーキンスは巨大な藁人形へと姿を変えるが、すぐさまバレットのコブシが腹へとうちこまれる。
「爆!」
バレットの背後で爆発が起こる。バレットから飛びのきながらアプーはドンドンと胸を叩き、爆発させた。だが爆発の煙を腕で薙ぎ払ったバレットはアプーへと一瞬で近付き、殴り飛ばした。
ドレークも“リュウリュウの実”の能力でアロサウロスに変身する。そのままバレットへと迫ったドレークはバレットの体に噛みついた。だがやっと体を起こしたウルージの元へと放り投げられる。その時、バレットの体の周りを鳩が飛び交った。
「なんだ?」
その直後、バレットの顎に蹴りが入る。バレットの体がのけぞった。
「ザマァねぇな!ガキにしてしまいだ!」
そのままお得意の蹴りでバレットを倒そうとしたボニーだが、バレットに足を掴まれて地面へと叩きつけられる。
その背後から炎の竜がバレットに迫った。振り返ったバレットの顔面へと食らいつく。
「炎竜の火の大渦!」
そのままバレットの体を火の渦が囲んだ。それを破って、一瞬でカナの前へと現れる。彼女の顔面を掴んで岩へと叩きつけた。
『水竜の咆哮!』
ドバァッと大量の水が背後からバレットを襲う。切り裂いて現れたバレットがティアナの顔面を掴もうとするが、それより早く宙返りしたティアナがバレットに手を向けた。
『水竜の水砲!』
幾つもの水の弾がバレットの頭上から降り注ぐ。土煙がのぼった。
だが、地面へと着地したティアナの目の前にはすでにバレットがいた。
「滅竜魔導士、貴様らも最悪の世代だったな······」
『きゃあっ!?』
腕を掴まれたティアナがブンブンと振り回されて、投げ飛ばされる。
「ティアナ!」
岩から起き上がったカナがティアナを助けに行こうとするより早く、凄いスピードで投げ飛ばされたティアナを体を起こしたルフィが受け止めた。
「大丈夫か、ティアナ」
『ルフィ······!』
ルフィは優しくティアナをおろすと、ダッと地面を蹴った。それと同時にキッドの右腕に金属や武器が集まる。
「ゴムゴムのォ!象銃!!」
「うぉおおおおお!」
“武装色の覇気”を纏ったルフィのコブシとキッドの右腕がバレットへと迫る。バレットは二つのコブシを軽く手ですれ違わせた。
勢いをつけたルフィとキッドのコブシがお互いの顔面へと入る。
『ルフィ!』
水の翼を広げたティアナが飛んできたルフィを受け止めた。
「お前ぇ!」
「「邪魔すんじゃねぇ!!」」
起き上がったルフィとキッドがお互いに声をあげる。
「お前ら息ぴったりだな」とボソリとカナがつぶやいた。
「てめぇらが邪魔だ!大頭目!」
“シロシロの実”最大の能力、全身を巨大かつ移動可能な城に変身させたベッジに、機械兵器などに目がないルフィとカナが目をキラキラと輝かせる。
「「すっげぇ〜!」」
『言ってる場合か!』
ティアナがツッコミを入れると、バレットは「へっ」と笑った。
ベッジの胸部分から出ている大砲がバレットへと狙いを定める。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
土煙があがるが、ベッジは目を見開いた。バレットが砲弾を手でさばいているのだ。そのまま一瞬で移動したバレットはベッジの胸へと頭突きをかます。
地面へと着地したバレットの上空に影ができた。
藁人形のホーキンスが藁備手刀をバレットへと迫る。だが、それも手でパシッと掴まれた。するとホーキンスの口からいくつもの釘が飛び出す。バレットはそれを首だけを動かして避けるとそのまま藁備手刀を掴んだまま、ホーキンスを地面へと叩きつけた。
バレットの背後で爆発音が鳴り響く。
胸を叩きながら爆発させるアプーに、バレットは爆発の煙を薙ぎ払ってニヤリと不敵に笑った。
その横から刀が顔面へと入る。だがそれも顔面へと入りきらずニィッと笑ったバレットはキラーをコブシで殴り飛ばした。
その背後から長い尻尾がバレットに巻き付く。
ドレークに持ち上げられたバレットの前に、巨大化したウルージが現れた。
「因果晒し」
巨大化した腕に殴り飛ばされたバレットが地面を削って無傷で立つ。「ヘヘッ」と笑うバレットの上から声が降ってきた。
「くたばりやがれェ!!」
金属や武器がたくさんついた右腕を振り上げたキッドがバレットへと迫る!
それと同時に、水と炎の翼を広げて空中を舞うティアナとカナが大きく息を吸った。
『水竜の······』
「炎竜の······」
「『“咆哮”!!』」
水と炎の交わった攻撃がバレットを襲う。
そしてルフィが仕上げとばかりに、バレットに突進した。
“武装色の覇気”をまとわせたコブシをグッと引き、ルフィが叫ぶ。
「ゴムゴムのぉ〜〜! 火拳銃!!」
超高速で放たれたコブシは炎をまとい、その炎もろともバレットに叩きこまれた。
今は亡き義兄、エースの得意技である“火拳”。その名を冠したルフィの必殺技だ。
ドゴォォォン!
その攻撃をまともにお腹で受け止めたバレット。
歯をくいしばり、数秒耐えた彼であったが、さすがに受け止めきるのは無理だった。
バレットの体は吹っ飛び、飛んだ先にあった岩を砕き地面に激突した。
土煙があがり、バレットの体は見えなくなる。
肩で息をしながら、その土煙を見る最悪の世代たち。
「ティアナとカナ以外余計なことすんな!お前ら!」
「それはこっちのセリフだ!」
「とことん合わないね、あんたたち」
『でも結構息合ってるっぽいけど······』
「「合ってねェ!!」」
『······ハイハイ』
ティアナの言葉に同時に言い返すルフィとキッドに、ティアナとカナはあきれたようなため息をついた。そしてバレットへと視線を向ける。
あれだけの攻撃を受けたのだ。バレットも無事ではないだろう。
しかし、その考えはまちがいだった。
「!!」
ルフィの視線の先に、服はボロボロになりながら、平気で立ちあがるバレットの姿があった。
バレットはまるでダメージがないかのように、ルフィたちの方へズンズン歩いてくる。
「悪くねェ······だが、足りねェ!」
ボロボロの服を無造作につかみ「ビリリ」と破りとるバレット。
「鍛錬も戦略も覚悟も、何もかも足りねェ······」
服を破り捨てたバレットの体があらわになった。鋼のような肉体に、無数の傷が刻まれている。特に左肩の大やけどは痛々しく、異様な存在感を放っていた。
「鍛えぬいた本物の“強さ”ってもんを見せてやる······!!」
どこかイラついた表情を見せ、バレットがルフィたちの目の前までやってきた。
そして───
ドムッ!
バレットのパンチが、鈍い音を響かせてルフィのお腹に突きささった。
「······くっ!」
「ぬうううう!」
バレットがコブシを振りぬくと、ルフィの体が吹っ飛び岩に大激突した。
「『ルフィ!』」
『あんた······何が目的なの······!』
ティアナの問いかけに、バレットは余裕の笑みでこたえる。
「“世界最強”だ!」
そのシンプルな答えに、最悪の世代の面々は少したじろいだ。
バレットの声色に、ふざけた様子は一切ない。本気で言っているのだ。
「いい緊張感だ······簡単に死ぬなよ······!」
一人この状況を楽しんでいるバレットの猛攻は、そこからはじまったのだった。
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