男と男の戦い
ルフィとZの死闘はつづいていた。
義手が空薬莢を排出する。
放熱板がマグマのように熱を帯びる。
ルフィの上着は、すでに燃えつきていた。
「ムダだ······!おまえに、おれの正義を砕くことはできん!」
「“ゴムゴムの
銃!」
渾身の右ストレートがZの顎をとらえた。つづけざまにボディブロー。そのまま連打につなげた。
「ぬぅっ!」
「“
銃乱打!」
秒間数発の連打が、さらに加速する。義手でガードするZは、じりじりと下がっていった。
胸部の、義手を固定する
留め具に打撃を受けたZは、よろめいた。
「おまえは海賊のわりには骨がある。軟弱な海軍よりは、ましだ。だが······!」
Zは、いっそう体にチカラをこめた。
膨張した大胸筋が、義手を固定したワイヤーをひきちぎった。
連打がとだえ、ルフィは、息があがっていた。
それでも挫けぬZの気迫を前に、休むことなく親指をくわえて噛む。
息を吹きこむ。みずからの腕をゴム風船のように、ふくらませた。
骨風船───
「“ギア・サード”!」
「!?」
巨人の腕となったルフィの拳を前に、さしものZも度胸を抜かれた。
「
巨人の銃!」
ルフィの巨大ゴムパンチと、Zの義手が激突した。
義手が激しい軋み音を立てる。
ついにZは、こらえきれず後方に吹き飛ばされた。
火の粉が散る。
カルデラのなかは、噴火の予兆に包まれつつあった。
「おれは······Zだ!」
ネオ海軍の総帥は、踏みとどまり、さらにチカラをみなぎらせた。
Zは、もはや肉体を超えた気力の塊だった。
ルフィも、また───
“ギア・セカンド”
ゴムの体をポンプとして血流を流す。体は赤く熱を発し、蒸気を噴く。
「ゼットォ〜〜〜!」
「若造がァ!」
吹雪のごとき火の粉のカーテンを破って、ふたりの男は信念をかけて激突した。
拳と拳。
気迫と、気迫。
骨が、肉が軋みをあげた。ふたりの戦いに耐えきれず、地面はめくれあがり、火口は、さながら嵐の巣となった。
そのとき───
山の中腹で、大爆発が起こった。
ダイナ岩だ。
さらに、もう一ヵ所でも。ネオ海軍の工兵部隊が設置したダイナ岩が、ついに滅亡へのカウントダウンをはじめた。
〈麦わらの一味〉は山を駆け上がる。
ティアナ、カナ、ナミ、ウソップ、チョッパー、ブルック、ロビン、フランキーが、ようやくカルデラ外輪までよじのぼったとき。
「「「「『············!』」」」」
仲間たちの前で。
〈新世界〉の命運を決する戦いが、決着を迎えようとしていた。
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