双子との戦い
〈麦わらの一味〉は奮闘する。
ぶつける。
近付いてきた
滅竜魔導士相手に、シエルは刀を構え、マイルは短銃を構えた。ティアナのレイピアとシエルの刀が交錯し、マイルの銃弾がカナを襲う。
「くっ······!」
シエルがティアナのレイピアを押しかえし、その隙をついて横なぎに薙いだ。だが、その先にティアナの姿はなく、ハッとしたシエルが頭上を振り返ると、バク宙しながら飛び上がったティアナが右手をシエルに向けていた。
『“水竜の······
水砲”』
「ぐあっ!」
いくつもの水の弾丸が頭上からシエルに降り注いだ。土煙がシエルの周りに立ち上る中、綺麗に着地したティアナの背後から幾つもの銃弾が迫りくる!
「おっと······あんたの相手はこっちなんだけど?」
「!」
すばやくティアナと銃弾との間に入ったカナが二本のレイピアで弾き返すと、右手をマイルの方へと向けた。
「“炎竜の
火の大渦”!」
「······くっ!」
向かってくる火の渦にマイルは銃を撃つが、いくつもの銃弾は火の渦にまみれて燃えつきてしまった。急いでその場から飛びのくと、マイルがいた場所は大きな焦げ跡を残した。
「ぐあっ!」
「シエ······きゃあっ!」
ティアナによって、武装色を纏った足で蹴り飛ばされたシエルの体が焦げ跡を見て冷や汗を流していたマイルの体にぶつかる。
「な〜んだ、こんなもん?幹部っていうからもっと強いのかと思ったのに」
『ナミたちの方も気になるし、さっさと終わらせようか』
チラリとちびナミたちのいる方を見て、ティアナはレイピアに指を滑らせた。カナも一本のレイピアを投げ捨てて魔力を高める。
「くそっ!海賊なんかに······!」
「負けてたまるもんですか!」
シエルとマイルは立ちあがって刀と短銃を手に、不敵に微笑む妖艶な
滅竜魔導士に肉薄した。
『“
水幻想・流水の舞”』
剣先へと指を滑らせると、刀身がたちまち水色に変わった。ティアナの魔力を纏ったレイピアが水色に輝き、水特有の冷たさを周囲に巻き散らす。
横向きにレイピアを構えるティアナへとシエルの刀が切迫する。ティアナは舞を踊るように刀を受け流すと、シエルとすれ違いざまに一発その体へとレイピアを打ち込んだ。レイピアの軌道をなぞるように水が流れる。
パァン!パァン!と撃ち込まれる弾を全てレイピアで弾き飛ばしたカナは、レイピアを構えてニヤリと笑った。
「“炎舞······炎の
剣”」
カナの手から炎がわき上がり、それはレイピアの剣先まで包み込んだ。迫りくるマイルとの距離を一気に詰めて、いくつもの銃弾をかいくぐると、レイピアを片手で一回転させてマイルに振り下ろす。
「!?」
一瞬の出来事にマイルはただ目を見開くだけだった。
ドサドサッとシエルとマイルの体が地面へと倒れる。ティアナとカナは冷たくそれを一瞥して、ナミたちの方へと踵を返した。
『さて、ナミたちの方へと行きますか』
「ですね」
遠くに見える仲間たちの元にいるのは、全高六メートルを超える巨大な───
“
平和主義者”
かの海軍の天才科学者、“五百年先を行く男”ドクター・ベガパンクの設計からなる、傑作人型兵器だ。
「あれ、パシフィスタ······?」
『······いや、白くまみたいじゃね』
白色塗装の人型兵器パシフィスタ部隊。
パシフィスタは、〈王下七武海〉のひとりだった〈暴君〉バーソロミュー・くまの肉体をベースに、大将・黄猿の『ピカピカの実』の能力を研究、レーザー兵器として搭載している。試作をもとに量産されたパシフィスタは、戦場、対テロ治安維持において絶大な効果をあげていた。
一味の歌姫と音楽家は優雅な足取りで仲間の元へと向かった。
ふたりの手首にある金と銀のブレスレットのシャランッという音色だけがその場に残された。
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