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頼もしくて愛おしい背中


王宮を囲ったダフトグリーンの樹林帯のかたわらで、鉄棒監獄に囚われていたナミに呼びかける声があった。


クォ〜······


意識を取りもどして、ゆっくりと体をよじったナミの前では、雪原に、黒コゲになった強化兵が倒れていた。


(ビリー······?)


鼻栓をしたエレキ鳥が、バチバチと電気をまとって、心配そうにのぞきこんでいる。
ナミは、われにかえった。


「あなたがやったの······?」


ビリーは羽ばたいて、クォ〜っと鳴いた。
その翼にナミが手を伸ばす。
電気に打たれて、ナミがうっと顔をしかめると、ビリーは「ぼくにさわっちゃ、あぶないよ」という感じで身をひこうとした。いったん放電したビリーは、しばらく帯電したままになってしまう。しかしナミは、今回は、ビリーを遠ざけようとはしなかった。


「このままで······!おねがい、聞いて······」


ナミの必死の形相に、ビリーは息を呑んでコクリとうなずいた。




ナミがビリーに「そのままで」と放電をつづけさせた理由───それは彼女の計略を続行するためだった。
ダフトグリーンの根元には、彼女が仕掛けたダイナマイトが、まだ、おかれたままになっていた。

体内電圧を上げたビリーは一気に放電した。

すると一か所にあつめた導火線の端に、火花が散り、着火する。それを見届けたビリーは空に浮かび上がった。
ダフト病に冒されて動かぬ体で、ナミは導火線の火花を見つめた。
頭に浮かぶのはどんなときでも傍にいてくれた大切な親友の顔。


(ティアナ······)


“東の海イーストブルーにはたくさんの思い出があるからさ。ルフィと出会ったのも、育ての親に出会ったのも、仲間たち───ナミと出会ったのも東の海イーストブルーでしょ?”


昔、ティアナから聞いた大切な思い出の場所。ティアナの大切な物はナミの大切な物でもある。いつも傍で笑ってくれていたティアナの顔が、脳裏をよぎる。


(だいじょうぶよ······心配しないで。大切な故郷を、めちゃくちゃになんか······絶対、させないから······!)


左腕のブレスレットを見つめる。


“ナミ!”


義姉のノジコが、思い出のなかで語りかける。


“これ、いっしょに連れてってくれる?”


自分の腕輪を贈って、楽しくやれよ、といって快く妹を送り出した姉の顔が、にこりと笑った。

たとえ離れてても、心は、大切な人たちとともにある。






















「こんだけの力の差を見せつけられてまだやんの?」


地に倒れ伏す海賊たちの前で、炎の竜を周りに浮かせながらカナがため息をつく。

ほとんどの海賊たちはカナの周りで地に倒れ伏していた。
カナの周りに存在する炎の竜に怯みながらも、海賊たちは各自の武器を手にカナに向かっていく。


「まったく······放棄したいけど、船長に任されてるかんね。一気に終わらすけど、悪く思わないでよ?」


ニヤリと笑ったカナは、魔力を高めると大きく空気を吸い込んだ。熱気が体から溢れる。


「“炎竜の咆哮”!!」


魔力を高めたおかげでいつもより数倍の炎を口から放った。
一通り終わると、カナは背後でバタバタと人が倒れる音を聞きながら踵を返した。


「さぁて、どこに行くかな······」


楽しそうに鼻歌を歌うカナが広間を出ていく。
シャランッと銀色のブレスレットが音を奏でて揺れた。



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