Shoot-'em-up!
「ティアナ、準備できた?」
『うん』
白色のワイシャツの胸元を大胆に開けて、黒のパンツスーツのカナが鏡の前で座っていたティアナを振り返って声をかける。金色の髪をポニーテールに結んで、カナは部屋のドアに向かって歩き出した。
その後ろを、ゆるふわ銀髪をポニーテールに結い上げたティアナがついていく。Aラインのミモレ丈のロングフィッシュテールの黒ドレス。オーガンジーのシアー感とフラワーレースがキュートなもので、黒の透けているボレロを羽織っている。
「あら、ティアナ。可愛いわね」
ドアの前で待っていたロビンがカナと一緒に出て来たティアナの姿を見て、ニコリと笑う。それに照れくさそうにしながらティアナはお礼を言った。
「ほんっとに、可愛いよねえ!食べちゃいたいくらいにさァ!!」
『近づくな。』
ガバッと抱き着いてこようとしたカナをヒラリと躱しながら冷たい目で見るティアナの右目は、もうガーゼに覆われていなかった。何回も抱き着こうとして躱されているカナと相棒を冷たい目で見るティアナにふふっと笑いながらロビンがみんなの元へと向かう。
姿を現した女性陣の姿に目をハートにするサンジを視界にいれてカナは苦笑いをした。そしてじっとティアナを見つめるルフィにそろりと近付いて肘でツンツンとつつく。
「なぁに、見惚れてんの?」
「べ、別に見惚れてなんかねェよ!」
赤い顔を片腕で隠すルフィをニヤニヤと笑いながらカナがつつく。
「いやいや、ティアナが可愛いのはわかってるからさ。ひとこと言ってあげれば?あんなに可愛い格好してるんだから」
ぐっとカナの言葉に押し黙ったルフィがティアナの方に向かって歩き出すのを見送って、カナは他のみんなの元へ向かった。
「······ティアナ」
少し離れた所でみんなを見ていたティアナの耳に聞こえたルフィの声に、ティアナは振り返った。赤いシャツにロングコートを羽織ったルフィの姿に思わず頬を赤らめる。
『······な、なに?』
「おまえ、わかってんか?」
『え?』
聞こえてきたのはいつもとは違う低い声で。ティアナはびくびくとしながらルフィを見上げた。
「んな可愛い格好でシキのとこに連れて行けるかよ」
帽子で顔を隠しながら言うルフィの耳が赤くなってることに気付いたティアナは、嬉しそうに笑みを浮かべてルフィに抱き着いた。
『ルフィ、かっこいい〜!』
「······聞いてんのか?」
ルフィは自分の胸に顔を埋めてぐりぐりと頭を振るティアナの体を抱きしめた。ポニーテールに結ばれたピンク混じりの銀髪をするりとすく。
そしてはぁとため息をつくとティアナの肩に顔をうずめた。
『船長の女なんだからこれぐらいしないとでしょ?あたし、頑張ったんだから。連れて行かないなんて言わないで?』
「だってよォ、おまえこれ可愛すぎだろ」
『えへへっ』
ティアナはルフィの言葉に頬を染めてはにかんだ。
「おーい、ティアナー!ルフィー!そろそろ行くよー!」
『はーい』
カナの言葉に返事をしたティアナは、顔をあげるとルフィの頬にチュッとキスをしてカナの方へと駆け出した。
「敵わねェなァ······」
みんなのところで笑顔を浮かべるティアナを見て、ルフィは笑顔を浮かべて自分を呼ぶティアナの元に歩き出した。
結局のところカナもルフィも、ティアナには敵わないのだ。
***
カルデラ湖のある山の斜面に墜落していた〈サウザンドサニー号〉の、ライオンの
船首像の口が開き、砲口が現れた。
秘密兵器ガオン砲が、まばゆい火を噴いた。
コーラ三樽分のエネルギーを充填した砲撃の瞬間、ガオン砲は、船体後部の噴射口からも二樽分のエネルギーを放つことで衝撃を相殺緩和する。
砲撃を火口に命中し、その外縁部を削り取った。
カルデラ湖の水が、堰を切ってあふれ出した。
ちょうど山肌の溝に位置していた〈サウザンドサニー号〉は、濁流に押し流されていった。
「うまく水をひきこめたわ」
甲板で、ロビンが声を上げる。
ルフィたちは母船にもどると、ナミを追うことにしたのだった。
「ティアナ、せっかくだしこの水食べとけば?魔力溜めにさ」
『あ、そうだね』
ティアナが大きく息を吸うと、周りの水も一緒にティアナの口のなかに吸い込まれていった。
滅竜魔法は己の属性にあたる物を喰らうことでそれを力とする。だから水の滅竜魔導士のティアナは水を食べれば力がいつもよりでるし、炎の滅竜魔導士のカナは炎を食べれば力が湧く。さすがに自分が出す魔法は食べられないのだが。
「おい······島が動き出してるぞ」
ゾロが気づいた。ほかの島は、頭上にある王宮の島と合体していく。取り残されているのは、彼らがいる島だけだった。
「だんだん離れてく〜〜〜!」
「本当にだいじょうぶでしょうか······!?」
チョッパーとブルックが不安そうに声を上げる。
「やるしかねェ!考えてるヒマなんかねェよ!」
サンジが叫ぶ。
〈サウザンドサニー号〉は、山の傾斜をあとずさるように流れていく。
「とにかく急げ!行くぞ、フランキー!」
ルフィが合図する。
帆を絞った船は、舳先にめざす王宮の島をとらえた。
あそこにナミがいる。
「“
風来・バースト”!」
後部の噴射口からコーラエネルギーが放たれた。
桁ちがいの推進力を得た船は、濁流を併走、斜面を発射口にして一気に飛翔した。
星へ───