うしろ手の強さ
「……姫、ヨナ姫。」
ランに手を引かれて歩いていたヨナが地面にぺたりと座り込んだ。
歩きなれない山道を歩いて体力の限界が来たのだろう。
はあ、はあと荒い息をつくヨナにしゃがみ込んだアキが声をかける。
「少し休みますか?」
「……アキ。」
ランに支えられて木に寄りかかったヨナはランの手をぎゅっと握り締めた。
「ミンスは…死んじゃったの…?私も…死ぬのかな。姉様も、ハクも、アキも…スウォンに……殺されて。」
「あんなクソッタレにやる命なんて持ち合わせてねェですよ。」
「ええ。あたしもありません。」
『私も。』
ハク、アキ、ランがそう言うと、
「死なないでね……姉様…アキ…ハク。死んだら……許さない…から…」
ヨナはゆっくりと目を閉じて眠りについた。
涙が流れるヨナの頬をランが目を細めて拭いとる。
『辛いわよね……ヨナには…』
「あんたは大丈夫なんですか?」
ハクのその言葉に振り返ると心配そうにランを見つめるアキの横でハクが眉を顰めてランを見ていた。
『私は……』
「姫様、もうヨナ姫は眠りましたよ。我慢なんてすることないんです。」
アキの言葉に今まで堪えていた涙がランの目から溢れ出した。
顔を両手で覆い、嗚咽を溢しながら涙を流し続ける。
『なんで…こんな、こと…に……私は…こんなこと、のぞんで…なかったのに…』
絶えず涙を流し続けるランをアキが抱きしめようとすると、それより先にハクがその体を包み込んだ。
何も言わず、ただ自分を抱きしめるハクの腕にランは密かな暖かさと安心感を抱きゆっくりと目を閉じた。
───なんて、安心する体温なのだろう…。
・
・
すぅすぅ、と小さな寝息が聞こえてくるとハクはヨナの隣にランを寄りかからせた。
そしてその頬に流れる涙を拭う。
「……まだ、信じられねェな……」
「……イル陛下が死んだなんて、ね……」
アキが頷いた。
「姫を2人だけにして…しょーもねー王様だよ。」
眠っているヨナとランをハクとアキは見つめた。
───昔っから見てきた。汚れや痛みなど知らない姫だった。
「なあ…陛下。どうすればいい……?」
俺にはあの頃が、まだ昨日の事のようですよ
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