澄み切った青空の下、古いバンが首都高速を横浜方面に走っていた。
『仕出し弁当の松風亭』とボディに大きく書かれたバンはガタゴトと揺れながら走り、その横を何台もの車が追い越していく。
「クソッ。また抜かれた!」
運転席の毛利小五郎は、追い越していく大型トラックをうらめしそうに横目で見た。
二列のバックシートには、コナン、花恋、灰原、歩美、元太、光彦が乗っていて、バンの堅いサスペンションのせいで道路の継ぎ目を通過するたびに体が上下に揺れる。
『······どーせ借りるならもっといい車にしてほしいよ』
花恋がぼやくと、後ろのシートの光彦が「ですよねー!」と身を乗り出した。
「電車にすればよかったね」
助手席の蘭の言葉に、歩美と元太が「うん」「だよなー!」と同意すると、小五郎が「うるせー!」と振り返った。
「依頼主がおまえたちも連れてこいって言うから、全員乗れる車を借りたんじゃねーか!」
「あと五秒」
「あ?」
「え?」
灰原の言葉に、小五郎と蘭はきょとんとした顔でバックシートを振り返った。
「今すぐハンドルを切らないと、五秒後には壁に激突するわよ」
「何っ······わあっ!」
小五郎が驚いて前を見ると───すでにカーブに差しかかっていて、壁が目の前に迫っていた!
慌ててハンドルを切ると、タイヤが悲鳴を上げながらスリップして、バンは車線を大きくはみ出した。
バックシートに座っていたコナンたちの体が窓に押し付けられ、「うわあ!」「きゃああ!」と悲鳴が上がる。
バンはジェットコースターのように蛇行しながら走り続け、ようやく車体がまっすぐになった。
「······ったく、スーパースネークじゃないっつーの」
支えていた花恋の体から手を離しバックシートに座り直したコナンがぼやくと、窓から海に隣接したレジャーパーク『ミラクルランド』が見えてきた。
大きな観覧車の奥には、まるで巨大な蛇のような形をしたジェットコースター『スーパースネーク』のレールが海に飛び込むように突き出している。
助手席の蘭もミラクルランドに気づき、わあっと嬉しそうに窓から顔を出した。
「キャ〜ッ!早く乗りたいスーパースネーク!」
「すっげぇ〜!」
「怖すぎる!」
「さすがミラクルランドの目玉コースターですね」
元太、歩美、光彦もバックシートの窓から顔を出し、スーパースネークを見て目を輝かせた。
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