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一週間後。
コナンたちを乗せた一台のタクシーが緑台警察病院に入って行った。
そのタクシーが病院の玄関につくと小五郎が一目散に病院の中へと駆けて行く。
受付で目暮がいる病室の番号を聞いて病室へと足を向けるコナンたち。
病室に着くと小五郎がノックをした。


「どうぞ」


中から声が聞こえ入ろうとすると、元太が口を開いた。


「目暮じゅうさん···?」
「じゅうぞうって読むんだよ!」
「そうか、アハハ」
「いやですよ、元太くんたら」


笑い合う子供たちの横でコナンと花恋が目を丸くした。


(へーッ!目暮警部の名前、じゅうぞうって言うのか···)
(まあ、子供たちが間違えるのも無理はないかな···)


中に入るといつもの帽子をかぶった目暮がベッドに横になっていた。
その隣には白鳥がいる。


「オォッ、毛利くん。わざわざ来てくれたのかァ。それにみんなも」
「ちょうどみんなでハイキングに出掛けるところだったんです!」


蘭が微笑みながらそう応えると小五郎が身を屈めて目暮に顔を近づけた。


「警部殿、傷の具合は?」
「幸い、急所を外れてましたので命に別状はありませんが、数日の入院が必要だそうです」


後ろにいた白鳥が言うと花恋の隣にいた歩美が「ねぇ、警部さん!」と声をかけた。


「どうしていつも帽子かぶったままなの?」


素朴な質問だな···と花恋が目暮に目を向けると目暮はその質問に苦笑いをした。


「まあ、いいじゃないか」


誤魔化して笑う目暮を見て花恋と歩美とコナンの後ろで元太と光彦がコソコソと話し合う。


「きっと薄いんだぜ」
「大きなコブがあるのかもしれませんよ!」
『どっちも違うと思うけど』


小さく突っ込むと隣にいたコナンも同意するように頷いた。


「使用されたのはハンドガンタイプのボウガンと思われます···。目暮警部と知って狙ったのか、たまたま通りかかった警部を面白半分に撃っただけなのか···その両面から、捜査を開始しています」
「なあ、警部のおっちゃん!拳銃持ってたんだろ?それで逃げられちゃったの?」
「ジョギング中に拳銃持ってるワケないだろうが!!」
「それに···たとえ持っていたとしても、ワシは毛利くんと違って···そっちの腕はイマイチだからな」


それを聞いた蘭が不思議そうに小五郎の横から目暮を見た。


「え?お父さん、拳銃うまかったんですか!?」


目暮はベッドに横になりながら人差し指を立て自慢げに口を開いた。


「警視庁内でも一、二を争う腕前だったんだ!」

((へェ···誰にでも取り柄はあるもんだな/ね))


目暮の言葉を聞いたコナンと花恋はありえないという風に目を細めて小五郎を見上げる。
小五郎の意外な一面を知った気がした。


「ところで、ボウガンを撃ったと思われる場所から妙な物が発見されました」


「これなんですが···」と袋に入れたままの物を小五郎たちに見えるように掲げる。
興味深そうに小五郎が見つめるとその後ろから蘭が顔を出してそれを見た。


「何だ?これは」
「西洋の刀みたいね」

((アレ?これ、どっかで見た事ある/ぞ))


((どこだっけ······))と考えるように顎に手を当てたコナンと花恋は、顔を見合わせた。


***


東都大学病院。
英理が倒れたと聞いた蘭たちが、治療室へと駆けつけるとちょうど出てきた医者に詰め寄った。


「母は···!?」
「ご安心ください。すぐに胃の洗浄をしましたので、命に別状はありません」


蘭が「よかった」と安堵する横でコナンと花恋が険しい顔をして治療室を見る。


「やはり···毒物ですか?」
「ええ···農薬系の物かと思われます」


すると治療室の中からベッドに乗せられた英理が出てきて蘭たちが駆け寄った。


「お母さん···」
「蘭···」
「英理···」
「あなた···来てくれたの?」
『大丈夫?おばさん』


ベッドに手をかけて花恋が声をかける横でコナンも心配そうに顔を覗かせると英理は弱々しく微笑んだ。


「花恋ちゃんとコナンくんも···。ありがとう、大丈夫よ···」
「念のため、今日一日は大事を取って入院したほうがいいでしょう」
「よろしくお願いします!」


小五郎がそう応えると看護師たちがベッドを押して病室へと向かった。
それを見送った小五郎が口を開く。


「それにしても警部に続いて英理まで···。これは偶然なのか?」
「ところで、チョコレートを食べたとたん、倒れたとか」


白鳥が近くにいた刑事に尋ねると「はい」と答えた刑事は包装紙が入った袋を白鳥たちの前に掲げた。


「事務所の郵便受けに入っていたそうです」


その包装紙を見た小五郎が険しい顔で声を上げた。


「ジゴバだ。そ、それに···この紙製の花!」


「まさか!?」と呟く小五郎に白鳥が「···同じ犯人?」と口を開いた。


『「あれ?その花······」』

((どこだ!?どこで見たんだ···))


***


スケボーの修理をしてもらうため阿笠邸に来ていたコナンと花恋は目暮と英理の事を阿笠博士に話していた。
阿笠博士はコナンのスケボーを修理しながら口を開いた。


「でも、なぜ···あんな慎重な人が毒入りのチョコレートなんかを」
「ああ···この前の食事の時に···おっちゃん、蘭のお母さんを怒らせちゃって、そのお詫びだと勘違いしたらしいんだ」


刀と包装紙にある花の写真を見ていたコナンがそう答えると「なるほど」と阿笠博士は呟いた。
コナンの隣では修理が終わったスケボーを抱えながら眠そうにしている花恋がいた。
そんな彼女の頭を撫でながらコナンが写真を見続けると、スケボーの修理が終わった阿笠博士は「ホレ!修理終わったぞ」とコナンを振り返った。
その時、玄関の方からパリーンと何かが割れる音が聞こえた。


「ン!?」
『何の音?』


目を覚ました花恋の手を引いてコナンと阿笠博士が玄関へと駆けて行く。


「誰じゃ!こんないたずらしたのは!?」


玄関へと行くと、石が投げつけられたようで鏡が割れていた。
スケボーを抱えたコナンと花恋が割れた鏡の隙間から外を見るとバイクに乗りヘルメットをかぶった人が何かを持ちながらこちらを見ていた。
何を持っているのかに気づいた花恋が阿笠博士を振り返る。


『博士!開けちゃダメ!!』
「え?」


花恋の声にドアを開けた阿笠博士が振り返るとヘルメットをかぶった人はボウガンを撃った。
そのボウガンの矢がドッと阿笠博士の尻に当たると「おわッ!!」と声を上げながら阿笠博士が倒れる。


『「博士!!」』


駆け寄るコナンと花恋。
それを見ていた犯人はバイクのエンジンを吹かした。


「ワ、ワシは大丈夫じゃ!追え!!新一!!蓮華君!!」
「えっ、でも···」


狼狽えるコナンたちを他所に犯人はエンジンを吹かして走り去ってしまった。


「追え!!新一!!蓮華君!!追うんだ!!」
「『わかった!』」


だッと走り出したコナンたちは玄関を出るとカランと地面にスケボーを置いた。
唸り出したスケボーに飛び乗ってコナンたちは阿笠邸を飛び出す。
バイクが走って行った方向にスケボーを走らすが、途中のT字路でどっちに逃げたかわからなくなってしまった。


『どっちにいったと思う?』
「わからねえ。左なら歩美や元太たちの家のほうだろ」
『一か八か···』


探偵バッジを取り出した花恋は歩美たちに呼びかけた。


〈あっ···花恋ちゃん!!〉
『みんな!黒のオフロードバイク見なかった!?』
〈黒のオフロードバイクですか!?〉
〈黒のお風呂のバイクって何だあ?〉


「お風呂のバイクじゃない」と呆れたようにつぶやいた花恋の隣でコナンが苦笑いをする。
すると光彦達の探偵バッジからバイクが猛スピードで走ってくる音が聞こえた。


〈あれですよ!!あれが黒のオフロードバイクです!!元太くん!!〉
〈花恋!!〉
『了解』
「やっぱり左か」


ニヤリと微笑んだ二人はスケボーを光彦たちのいる方向へと走らせた。


***


しばらく走っていると歩美から連絡が入る。


〈花恋ちゃん!!今、米花駅のほうへ右折して行ったわよ!!〉
『了解!』
「よし。先回りだ!」


頷いた花恋と共にスケボーを商店街の方へと走らせる。
商店街を駆け抜けると、車の間で止まっているバイクを見つけた。


『新一!』
「ああ!よおし!見つけた!!」


スケボーを下りてバイクの元に駆け出すと、犯人はギャギャッとバイクを方向転換させ、歩道橋をバイクで上っていく。
それに舌打ちをした花恋とコナンは歩道橋へと走り出して、バイクが上っていった階段を駆け上がった。
歩道橋にいるたくさんの人たちが爆走するバイクを避ける中、コナンと花恋は歩道橋の上へと着いた。


「逃がさねェ!」
『逃がすか!』


コナンたちの声に犯人はバイクで歩道橋を駆け降りていく。


「絶対逃がさねェぞ!!」


ぐっと足に力を入れてバイクの後を追って階段を下りていると、途中でよろけて後ろに倒れそうになるおばあさんを見つけて花恋は「あっ!」と声を上げると急いで階段を駆け降りた。


『大丈夫?おばあちゃん!』


背中を支えた花恋と後を追ってきたコナンがバイクが走り去った方向を見るが、目的のバイクはもう姿が見えなかった。


「どうもありがとう」


おばあさんのお礼に花恋はニコッと笑って首を横に振ると、コナンと共に鋭い目つきでバイクが去って行った方向を睨みつけた。


***


犯人を取り逃がしたコナンたちがスケボーで阿笠邸に戻ってくると庭に白い何かが落ちているのを見つけた。
スケボーから下りて白い物を拾い上げた花恋が後ろから近付いてきたコナンに見せる。


『新一、これって』
「ああ···そうか、わかったぞ!!」


ニヤリを不敵な笑みを浮かべたコナンと共に頷き合った花恋は、阿笠博士が運ばれた中央病院へとコナンと共にスケボーを走らせた。
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