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- ナノ -
11
病院を出たコナンと花恋は、スケボーに乗って浅草駅方向へと向かった。
すでに日が暮れ、街頭が照らす車道を駆け抜けていく。


(ウォルツさんは今日中に京都に戻ると言い残して消えた······ってことは······)

「蓮華、今何時だ?」
『えっと······七時四十八分!』
「新幹線に乗るため、八時近くには決着をつけるはず」
『! やばい!急がないと!!』


そのとき、ポケットの中のスマホが鳴った。
花恋はコナンの腰に抱き着く腕を強めスマホを取り出すと、ジョディからの着信だった。


〈ハーイ、クールキッド。新しい情報よ。大阪府警がスコット・グリーンの身柄を確保したわ。どうやら彼はハンターに頼まれて大阪に潜伏し、今日この時間まで捕まらないように頼まれていたそうなの〉
『やっぱり······!!』
〈ええ。ハンターが復讐のため来日したことは薄々気付いていたみたいなんだけど······その死を覚悟した顔を見て、人生の最後を好きなようにさせてやろうと思ったらしいわ〉
『彼が囮ってことは、犯人は······』


花恋は残った一人の人物を想像した。


***


ジョディが警視庁の廊下で花恋に電話をしていると、そばにいたキャメルがFBI本部から届いたメールを見せた。


「あ、それと今FBI本部から新たな情報が来たわ」
〈ヨシノは?ケビン・ヨシノについて何かわかったことはないの!?〉
「ええと······」


ジョディはスマホの画面に表示されたメールの本文を目で追いながら答えた。


「直接的なことじゃないんだけど······ハンターが家族を失った後、東洋人の男性と暮らしていたという目撃情報があったみたい」


スマホをジョディに向けて持っていたキャメルが「それが、もし······」と口を開いた。


「ケビン・ヨシノだったとしたら······」


ジョディが「!!」と目を見開く。
そのときに、もしハンターから狙撃を習ったんだとしたら───······。


「彼にも犯行は可能ね!」
〈うん!ありがとう、ジョディ先生〉
「ところで花恋ちゃんたち、今どこにいるの?」
〈次の狙撃地点と思われる場所に向かってる!〉
「え!?サイコロの謎が解けたの?」
〈いや、まだ定かじゃなくて確かめに行くんだけど、時間がなくて······〉
「何か手伝えることはない?」
〈コナンと私の推理が正しければ、またベルツリータワーの展望台が関係ありそうなの〉
「ベルツリー······」


ジョディはキャメルと顔を見合わせた。


「オーケー。私達もそっちに向かうわ」
〈うん〉
「くれぐれも気を付けて」


ジョディはスマホを切ると「行きましょ!」と廊下を走りだした。


***


青くライトアップされた駒形橋を通って浅草のとある通りに出たコナンと花恋は、スケボーを抱えて走りながら周囲をキョロキョロと見回した。


「あの模型では、このあたりだったはず······」


和菓子屋『千草』の前で立ち止まったコナンと花恋は、向かいのビルを見上げた。


『新一、あそこなら見えるかも······!』
「ああ」


コナンと花恋は車道を横切り、ビルの中へ入っていった。


***


コナンと花恋はビルの階段を一気に駆け上がり、屋上へ通じる扉を勢いよく開けた。


「『ベルツリーは!?』」


周囲を見回してベルツリーを見つけると駆け出し、スケボーを置いて屋上の縁に右足をかけた。
そして両手を顔の前に出し、ベルツリーの両側の見える藤波を狙撃したビルと森山を狙撃したビルの高さを比べた。


「やはり、あの模型と同じほぼ水平······ってことは······」


コナンと花恋は縁から足を下して二歩ほど下がると、顔の前に持ってきた指で四角を作り、その中に四つの狙撃地点を収めた。


『第三、第四の狙撃地点を繋ぐと等脚台形になり、ベルツリータワーの第一展望台を入れると······』


子どもたちが作った模型を見たときと同じ形になった。


「間違いねー。正五角形だ!」


コナンと花恋は静かに目を閉じた。
正五角形を宙に描いたまま、四つの狙撃地点にサイコロの目を重ねる。
第一狙撃地点のビルに『四』。
第二狙撃地点のビルに『三』。
第三狙撃地点の台船に『二』。
第四狙撃地点の駒形橋に『五』。
そして、正五角形の頂点のベルツリータワーの展望台に『一』と『六』を───。


『そっか······そういうことだったんだ······!!』


目を開けた花恋とコナンは険しい表情で、四角の中に収めた景色を見つめた。
そして、サイコロの目の数字の順に、一、二、三、四、五、六と狙撃地点を線で繋いでいく。
すると、正五角形の中に、星の形が生まれた。


「犯人が最後のターゲット───ウォルツさんに見せたかったのは、星形───!!」


再び縁に足をかけた花恋は、犯人追跡メガネを取り出してかけるとズームアップしてベルツリータワーを見た。


「ってことは、元々ベルツリータワーの第一展望台にサイコロの『一』の目が置いてあり、これから犯人が狙撃する場所も同じ第一展望台───!!」


コナンの推理どおり───第一展望台の屋根に人影が見えた。
屋根の上に身を伏せ、二脚を立てた暗視スコープ付きのスナイパーライフルを構えている。


『いた!犯人は······新一、やっぱり、ケビン・ヨシノだよ───!!』


メガネをのぞくとヨシノのそばにサイコロが置かれているのが見えた。


「クソォ!ヤツはどこを狙ってるんだ!?」


花恋はコナンの声を聴きながら後ろを振り返りつつ、犯人追跡メガネに手をかけた。


『もっと正確な星形を表現するには、ここよりもう少し高い場所······そこにウォルツさんが現れるはず······』


すると、三百メートルほど後方に、花恋たちがいるビルより高い廃ビルがあった。
最上階の窓がチラリと光っていて、メガネのレンズをズームアップして見ると───窓に小さな星形が描かれていた。


『新一、あそこ───!?』


コナンは花恋の指さした先を見た。


***


廃ビルのトイレにウォルツの姿を見つけたコナンは、ボール射出ベルトのバックルのAボタンを押してサッカーボールを出した。
そしてすばやくキック力増強シューズのボタンを押す。


(今度こそゼッテー阻止してみせる······!!)


花恋は後ろでその姿を見守る。
右足を大きく振り上げたコナンは、廃ビルの窓に向かって思い切りボールを蹴り上げた。


「行っけぇ───!!」


コナンが放ったボールが夜空に弧を描きながら飛び、その後方からマグナム弾が超音速で一直線に突き進む───!!
マグナム弾は廃ビルの手前上空から、最上階の窓に向かって急角度で落ちた。
その左側の窓ガラスに描かれた星の中に、恐怖におののいたウォルツの顔がある───。
星の真ん中にマグナム弾が命中する寸前───サッカーボールが窓を突き破りウォルツの顔面に直撃した。
粉々に吹き飛ぶガラスと共に顔をゆがめたウォルツが床に倒れ、その頭上を通過したマグナム弾が床に突き刺さる───。


***


花恋がサッカーボールが当たったウォルツに気の毒そうに顔を歪めて犯人追跡メガネをズームアップしてベルツリータワーを見ると───自分たちに銃口を向けているヨシノがレンズに映った。


『ヤッバ!!』


とっさにコナンの手を掴み右へ逃げた瞬間───縁に銃弾が突き刺さった。


***


スケボーで逃げ回るコナンと花恋の足元をいくつもの銃弾が付き刺さり、砕けたコンクリートの破片が飛び散った。


「クソォ!屋上じゃ逃げ場がねぇ!!」


銃弾は逃げ続けるコナンたちを執拗に追い続け、やがてスケボーの車輪に当たった。
バランスを崩して放り出されたコナンは花恋を庇うように抱きしめて転がるように床を滑り、配管に激突した。
すぐに立ち上がろうとして───コナンの左足に激痛が走った。


「うぐぐぐ······ぐあ!」


必死で足を動かそうとするコナンの顔が苦痛でゆがみ、ガクッとうなだれる。


『新一!!』


必死でコナンを呼ぶ花恋も右腕を押さえている。
さっきの激突でまた傷がひらいたのだ。


((ヤッ······ヤベェ/ヤバい!))


ヨシノの殺気を感じたコナンと花恋は思わず顔を上げた。
その瞳にベルツリーが映る───。


***


ズームアップした犯人追跡メガネでもだえ苦しむヨシノの姿をとらえた花恋は、まさかと目を疑った。


『狙撃されたの······!?』


花恋の言葉にコナンがハッと振り返り、周囲のビルを見回す。


「でも······ここら辺であの高さを狙える場所といったら······」


コナンと花恋の目にひときわ高い建設中のビルが映った。
廃ビルのさらに後方三百メートルほどのところにそびえ立つ浅草スカイコートだ。


「『あそこから!?』」


***


コナンは犯人追跡メガネをズームアップして浅草スカイコートの最上部を見た。
するとそこには───二脚と各種光学機器を取り付けた大口径対物ライフル〈シャイタックM200〉を床に伏せて構えている人物がいた。
その顔を見てコナンがあっと驚く。


「え!?昴さん!?なっ、なんであんなところに······!?」

花恋に手を貸してもらい左足をかばいながら立ち上がったコナンに花恋は微笑んだ。


『なるほど、昴さんもサイコロの謎を解いたってわけね······』


そのとき、ポケットの中のスマホが鳴った。ジョディからの着信だ。


〈花恋ちゃん?ベルツリーに着いたわ。今、上れるか交渉中よ〉
『よかった!すぐに展望台の屋根に上がって。そこにヨシノが······』
〈やはり彼が犯人だったのね〉
「うん。どう、上れそう?」


コナンは左足を引きずりながら、花恋に手を貸してもらい屋上の縁へと近づいた。


〈ダメね。今日はオーナーが貸し切りにしてて、入れてもらえないみたい〉


ジョディの言葉を聞いて、コナンと花恋はハッとした。
園子が蘭や子どもたちをベルツリーに連れていったのだ───!!


『ジョディ先生!その貸し切りって蘭たちだ!!』
〈え!?〉
『事情を話して展望台に上がって、ヨシノを確保して───!!』


花恋は縁から身を乗り出して、ライトアップされたベルツリーを見上げた。


***


屋上の縁の前に立った花恋は、ズームアップした犯人追跡メガネでベルツリータワーの第一展望台を見ながら、コナンの蝶ネクタイ型変声機を使って蘭に電話をかけた。


『そう!だから今すぐみんなを連れて下りて!!』
〈え?でも犯人は······〉
『大丈夫!FBIがそっちに向かってる!』
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