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阿笠博士の家で子どもたちと宿題の模型を作っていたコナンと花恋は、テレビのニュースでハンターが射殺されたことを知り、すぐに世良に電話をかけた。


〈ハンターが射殺された!?〉
「まだ身元調査中みたいだけど、ほぼ間違いないんじゃないかって······うん、詳しいことがわかったらまた連絡する」


近くで電話を聞いていた灰原がうなずくと、コナンはスマホを切って花恋と一緒にリビングを出ていった。


「あれ?花恋ちゃんとコナン君は?」


二人がいなくなったことに歩美が気づき、


「またスマホ落としたんじゃない?」


灰原はしれっとした顔で答えた。
光彦が「え!?」と顔を上げる。


「さっき使ってましたよ?」
「またサボリかよ〜」
「花恋のスマホじゃない?いいから進めましょ」


灰原はそう言うと、作りかけの模型が広げられたテーブルに歩み寄っていった。


***


夕方のニュース番組では錦糸町の騒ぎをはじめ、東京のあちこちで起きた似たような事件が伝えられた。


「どうやら東京中がパニックってるようだな」


小五郎は事務所のテレビを消すと、向かいのソファに座る佐藤と高木を振り返り、コナンと花恋が座るソファに腰を下ろした。


「『無差別殺人』って言葉があっという間に広がっちゃって······」
「まあ無理もないですね。連続狙撃事件なんて日本では前例がありませんから」


蘭が二人に冷たい麦茶を出すと、佐藤は「ありがとう、蘭ちゃん」と頭を下げた。


「で、犯人の目星はついてんのか?」


小五郎にいきなり聞かれた高木は、ゴホゴホとむせながら麦茶をテーブルに置いた。


「それなんですが······」
「正直、ハンターが殺害されたことで私たちも混乱してしまって」
「それで、毛利さんの意見を伺いたいと思いまして······」


高木の言葉に、コナンと花恋は((え!?))と目を丸くした。


((おいおい。おっちゃん/おじさんに聞いてもしょーがねぇだろう/しょうがないでしょ······))

「なーるほど······」


小五郎はまんざらでもない顔で顎に手をやった。


「まあそうだなぁ······犯人は何らかの形でハンターに関係した人物なことだけは間違いねぇな」
「はい······日本在住のハンターの関係者といえば、元狙撃スクールの教官で、自らもシールズの狙撃兵だったスコット・グリーンか······」
「元海兵隊員のケビン・ヨシノです」


高木はテーブルに並べられたグリーンとヨシノの写真を指さした。


「実は、この二人は昨夜から行方をくらましていて······」
「何!?」


小五郎とコナンと花恋が目を見張ると、高木は「ただ······」と腕を組んだ。


「二人にはハンターを殺害する動機がないんですよね」


高木の言葉に花恋の横に座った蘭が「じゃあ、警察は犯人については······」と佐藤にたずねた。


「まだ捜査線上に浮かんでいない第三の人物じゃないかって」
「いや、まだ一人忘れてるぞ」


一同が「え?」と目を見張るなか、小五郎はテーブルに並べられたスペンサーの写真を取り上げた。


「横須賀基地元司令官、マーク・スペンサー退役海軍少将······」
「ええっ!?」
「しかし······」
「───の運転手の元海兵隊狙撃手、カルロス・リーだ!」


小五郎は持っていたスペンサーの写真を横にずらし、後ろのカルロスの写真を見せた。


「でも、スペンサーさんもリーさんも、ハンターの関係者では······」
「そうです!第一、動機が······」
「動機はスナイパーとしてのプライドだ!」
「プライド······?」


蘭がたずねると、小五郎は真面目な表情で「ああ」とうなずいた。


「ハンターの戦地での射殺者数は七十九人。リーは何人だ?」


高木は懐から手帳を取り出してパラパラとめくった。


「えっと······中東で三十六人です!」
「それは確定戦果だろう。未確認を入れると?」
「えっ?えっ?」


焦って手帳をめくる高木の横で、佐藤が「確か七十八人······」と答える。


「そう······それがリーには我慢ならなかった。射撃の腕前はオレの方が上だと······」


小五郎はそう言うと、持っていたリーの写真をテーブルに放った。
写真が麦茶のコップに当たってはね、ハンターの写真と並ぶ。


「そんとき、リーはハンターがシアトルでウッズを狙撃したことを聞いた。ハンターの射殺者数は八十人となった。それでリーは先回りして······」
「藤波さんと安原さんを狙撃!?」


高木がたずねると、小五郎はスッと人差し指を立てた。


「これで八十対八十。ようやくハンターと肩を並べたリーは、決着をつけようとハンターに戦いを挑み······」


前のめりになった高木がゴクリとのどを鳴らし、小五郎が「ダーン!!」とライフルを撃つ真似をする。


「わかりました!その線で調べてみます!!」


高木はテーブルの写真をかき集めると立ち上がり、


「ありがとうございました!」


嬉しそうな顔で部屋を出ていった。
佐藤も「ありがとうございます」と頭を下げて出ていく。


「お、おう······」


ライフルを撃つ真似をしたままキョトンとする小五郎の横で、蘭がパチパチと手を叩いた。


「お父さん、スゴーイ!」
「なっ、なはっなはっ、はははは······」


コナンと花恋は高笑いする小五郎をチラリと見ると、険しい表情で窓の外に目を向ける。


((とっぴな推理だけど、筋は通ってる。おっちゃん/おじさんの推理が当たってるかどうかはともかく······もっと情報が必要だな))


その夜。
毛利探偵事務所の外階段を下りてきたコナンと花恋は階段の二段目に座り、新たな情報を聞き出そうとジョディに電話をかけた。


〈新しい情報ねぇ······そういえば、ハンターの遺体から摘出されたのは、5・56×45ミリの弾丸だったわ。今までで一番軽い弾だったんで貫通しなかったのね〉
「え?今までと違う弾?」
〈ええ。狙われたのが頭部だったにもかかわらず、すぐにハンターだとわかるくらい、遺体の損傷が少なかったわ〉
『距離が近いから軽い弾に変えたのかな?』
〈ええ。反動を軽くして、的中率を上げたんじゃないかしら〉
「なのに、一発ミスをした······」


犯人は六百メートルと五百五十メートルの狙撃を一発で決める腕を持ち、さらに弾を変えて的中率を上げたにもかかわらず、ミスをするなんてことがあるんだろうか······?
ジョディもコナンと花恋と同様に疑問を感じたようだった。


〈そうね、おかしいわね······〉
『他にも何かわかったことある?』
〈一つ気になったことがあるんだけど······大学病院で見たハンターの遺体、すごくやせていたの〉
「『やせてた······?』」
〈ええ。シルバースターを受章した頃とはまるで別人のように······〉


コナンと花恋は警視庁で見たハンターの写真を思い浮かべた。
シールズ現役時代の写真はガッシリとたくましい身体をしていたが───······。


「その遺体、司法解剖だけじゃなく病理解剖もした方がいいんじゃない?」
〈え?〉
『それと、頭部のレントゲン写真も』


***


フライドチキンのお店の前に停めたベンツに寄りかかりながら電話をしていたジョディは、コナンと花恋の言葉にハッとした。


「わかったわ。目暮警部に話してみる。じゃあまた連絡するわ」


ジョディがスマホを切ってベンツに乗り込むと、店の自動扉が開いて大きな袋を両手に持ったキャメルが出てきた。


「行くわよ!早く乗って!!」
「はっ、はい!」


キャメルが慌てて乗り込むやいなや、ジョディはベンツを急発進させた。


***


スマホを切った花恋とコナンは険しい顔をして、小さく息をついた。


((クソォ······ここにきてわかんねぇことだらけだ/よ······))


すると、花恋のスマホが鳴った。───世良からの着信だ。


『どうしたの?世良の姉ちゃん』
〈花恋ちゃん。明日の朝、ハンターを狙撃した現場を調べてみようと思うんだ。一緒に行ってみないか?〉
『うん。私たちもちょうどそう思ってたんだ』
〈よし。じゃあ明日十時に浅草駅で。コナン君にも言っておいてくれよ〉
『うん』


スマホを切った花恋がコナンに世良との話を言って、二人で階段を飛び下りて歩こうとすると、


「花恋ちゃん!コナン君!」


事務所から出てきた蘭が声をかけた。


「どこに行くの?危ないから遠くに行っちゃダメだよ」
「うん。大丈夫」
『阿笠博士にスケボー返してもらってくるだけ』
「ちょっ、花恋ちゃん、コナン君······!」


蘭は走っていくコナンと花恋を心配そうに見つめた。
コナンと花恋を危険な目に遭わせないように世良に注意はしたけれど、それからも三人は一緒に行動して森山の狙撃現場に出くわしてしまった。
三人がこれ以上狙撃事件に首を突っ込んだら······そう考える蘭の胸に不安がよぎった。
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