腰痛

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「……。」

普段通りの部活動。
レギュラー陣は各自練習ということになっているため、それぞれが自由に練習をしている。
そんな中で、黒子は黄瀬をじっと見つめていた。

「…黒子っち?俺の顔、何かついてるっスか?」
「いえ、ただ少し気になることがありまして。」

黒子の視線に気付いた黄瀬は、不思議そうな顔をし、ボールを持ちながらそちらを向く。

「気になること?」
「はい。…黄瀬君、今日何だか動きが悪くありませんか?」
「え…?そ、そんなことないっスよ。気のせいじゃないっスか?」

黒子の言葉にあからさまに動揺した黄瀬。
その顔は僅かに紅潮していて、何かあったと断定するには十分だった。
人間観察が趣味の黒子の考察では、黄瀬は腰を庇いながら練習をしているようだ。
走るのも、シュートも、全部全力でやりきれていない。

「……。」
「い、っ!?」

次の瞬間、黄瀬の腰に見事に黒子のイグナイトがきまった。
腰から響く激痛に、黄瀬はその箇所に手をやりながら思わずうずくまる。

「やっぱり。黄瀬君、その歳で腰痛ですか?」
「ちょっ、黒子っち…腰痛めてるってわかっててそりゃないっスよぉー…」

半泣きになりながら立っている黒子を見上げる黄瀬。
そんな黄瀬を、いつも通り無表情で見下ろす黒子。
なんともシュールな絵である。

そんな二人に、近寄っていく者が一人。

「なにやってんだ、お前ら。」
「あ、青峰君。」
「げ…」

ボール片手に二人の元に歩いてきたのは、バスケ部のエースである青峰だった。
至って普通の反応を示す黒子に対して、黄瀬はあからさまに青峰から目をそらした。
もちろん、そんな黄瀬を青峰が見逃すはずもない。

「てめぇ…つーか、なんでうずくまってんだよ。」
「わっ!ちょっ、ストップ青峰っち!」

黄瀬の反応に若干不機嫌そうなオーラを醸し出す青峰だったが、うずくまる彼を見れば、不思議そうな顔をしながら黄瀬の首根っこを掴み、無理矢理立たせた。

「黄瀬君、腰が痛いみたいなんです。」
「腰?へぇー…。」
「く、黒子っち、シーッ!」

黄瀬を猫を持ち上げるかのような体制にしたまま、青峰は黒子の言葉にニヤリと笑みを浮かべる。
最悪だ、と黄瀬は心の中で呟く。
そんな呟きが青峰に聞こえるはずもなく、あっという間に、青峰の空いた手によって左腕を掴まれてしまう。
いつのまにか黄瀬の首根っこを掴んでいた手は背中に回っており、必然的に、体が青峰へと向いてしまう。

「で?なんで腰が痛ぇんだよ、黄瀬。」
「っ、うるさいっス!練習戻らなきゃ赤司っちに怒られ…」
「いいから、…答えろよ、涼太。」

青峰の拘束から逃れようと身をよじった黄瀬を力で制し、ぐっと耳元に顔を寄せた青峰は、いつもより低く、どこか艶やかな声で呟くように言った。
小声だったため、二人を見守っている黒子には聞こえていないのか、急に顔を真っ赤に染め上げた黄瀬に、不思議そうな顔をしている。

「ずるいっスよ、馬鹿…っ…」
「うるせェ。さっさと答えろ。」

バスケ部の主将である赤司の髪のように、真っ赤に染まった黄瀬の顔を見ながらにやにやと意地悪そうな笑みを浮かべる青峰。

「…昨日、大輝がやりすぎなんス。」

黄瀬はようやく観念したのか、顔を赤く染めたままちらりと青峰を見上げてそう言った。


***



「テツ、オレら今日はこれで早退するわ。オレのオレがやばい。」
「馬鹿なこと言わないでください。赤司君に聞こえm「青峰、俺がそんなことを許すとでも思うのか?さっさと外周行ってこい。」
「ぶっwww青峰っちファイトっスwwww」
「何を笑っている。黄瀬、お前も行くに決まっているだろう。」
「えぇっ!?」




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