バシュル山の逃亡戦 7/7
日の使者である自分も、守られてばかりではいられない。できることはなんだろうか。
森の声が風にのってナーマエに語りかける。その声が、だんだんと小さくなってくる。
徹夜明けのぼんやりする頭では、いろいろなことがうまく考えられなかった。今のところは、道案内くらいしか思いつかない。
ふいに過去のやさしげでいて、それでいてどこかはかるような口調がよみがえった。
ナルサスにたずねればなにか答えてくれるだろうか――。
かなたの姿はややかすんでいる。こなた、その古い友人はもっと穏やかな、落ち着いた姿で目の前にいた。
ナルサスは、昔よりはるかに知性をたたえているのだろう。
そんなことを考えながら、四人のあとを追って、ナーマエはちいさく息をはいた。うっすらと紫がかった空が広がっていた。
そのときすでにバシュル山から遠ざかり、平地をすすんでいた。うっそうとした森の姿はそこになく、視界が開けている。
遠くのほうから、空が色づいてきた。もうすぐこの空に、朝日がまぶしく輝いて、あたりいっぱいに光を浴びせることだろう。