バシュル山の逃亡戦 4/7
ダリューンのもとに馬を寄せると、ナーマエは息を切らして言った。
「ダリューン! われわれは進路を変えなければ。行く手で橋が落とされています」
「部下どものしわざか……。それで、橋を避けて、さきの村へ進めばいいか?」
言いながらも、槍をふりかざし、まわりの敵を威嚇した。
「いいえ。村をこえて、さらに東の集落に向かいましょう!」
それを聞いて、ダリューンはわずかに目を大きくする。
――この使者はパルス人ではないが、この国の地理をよく知っている。
振りむくと、ナーマエの視線はただ一点、仲間とともに敵地を駆ける、黄金の兜の持ち主へと注がれていた。
彼女はそこから視線をはずさず、冷静な口調を続けた。
「殿下をそこへお連れします。おそらく、カーラーン一党は逃げ道を想定し、兵を分派させていることかと」