バシュル山の逃亡戦 3/7

やがて山のふもとに近づいてくると、視界のずっと先に、小さく明かりが浮かんで見えた。
それはカーラーン一党が野営をするテントの光で、バシュル山を固める包囲線が近い証拠であった。

いまごろカーラーンの部下たちは、ナルサスの策にはまって、あのテントの中でぐっすり眠っているのだろう。

山道を馬で駆けつつ、暗闇に目を凝らす。小さな人影が遠くで動くのがはっきりわかったとき、ダリューンは馬を一気に加速して、野営地に夜襲をかけた。


見張りの兵士は突然の来訪者に驚いて、角笛を吹く。設営されたテントのなかで、兵士たちが飛び起きて、あわてる様子がうかがえた。

不意打ちにあって、カーラーン一党の指揮は混乱しているようだった。そのうちに、黒衣の騎士は長い槍を突き出して兵士をつぎつぎと闇夜にほうむっていく。

ダリューンのあとに続いて、暗闇から四騎があらわれ、包囲線を突破しようと試みる。ふいにその一騎、ナーマエはあることに気づいてはっとする。



離れたところで自分を呼ぶ声がした。
ダリューンが馬上で頭をめぐらせると、ナーマエが一騎でこちらに向かってくる。

ダリューンのもとに駆け寄るべく、ナーマエは馬を走らせた。部下どものテントの間をぬってゆく。しかし途中であわててその馬の足を止めた。

彼女のそばに、満を持して、単騎の騎士があらわれたのだ。
騎士が剣をちらつかせると、月の光を反射して、白い刃がきらりと光る。それがダリューンの目に入った。ナーマエはひるんだ様子をみせている。

ダリューンは馬上で叫んだ。

「かまうな! 走れ!」

その声が耳に届くや、ナーマエははっとして、たちまち馬をあやつり、騎士の脇を斜めにそれて駆け抜けた。

騎士は舌打ちする。
視界から消えた女を追うため、すぐに馬を返したが、振り向いた先にすでに女の姿はなく、その場で足踏みした。

ダリューンはさけびざま、すばやく馬をめぐらせていた。そしてあっけなく、ナーマエを狙った騎士を一撃で鞍上からなぎはらってしまった。

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