出会いU 4/4

「え? まさか。ナルサス、なにを……」

この期に及んでなにをいうのだろうかと、少しあきれてナーマエは言った。そこでぴたりと彼女は動きを止める。

何かに気がついたのである。ナルサスの肩ごしに聡明そうな少年の姿が見えていた。

もし会戦に敗れた王太子殿下が逃げのびていて、ここに身を隠しているのならば、若き万騎長がこの洞窟に身をひそめる理由も、旧ダイラム領主が家を捨てて騎士たちから逃げる理由も説明がつくのであった。

すべては王子を守るため、このふたりはここに身を隠していたのだと。

ナーマエがそう気づいたとき、さっきの自分の発言が急に恥ずかしくなったが、それよりも彼女は驚愕のあまりその場でよろめいて、ナルサスの肩越しのその少年に熱いまなざしを注いだ。


「殿下、申しわけございませぬ。ご紹介が遅れましたな」

ナルサスが謝罪すると、少年は気取らない声で答えた。

「かまわない、話は聞かせてもらった。それに古い友人なのだろう?」


その声が聞こえたとき、ナーマエはその場を立ちあがっていた。ナルサスの前を通り過ぎて、少年の前にまっすぐ進んだ。



「アルスラーン殿下」

洞窟に響いたのは、若い女の静かな声だった。
アルスラーンの前で彼女はひときわうやうやしくひざまずいた。

「おさがしもうしあげておりました。私は日の国の使者、ナーマエでございます」

アルスラーンのその、晴れわたった夜空の色の瞳が、この異国の使者の姿を映していた。

その大空の色の瞳に映るのは、一見、貴族の姫君のようではあるがどこか凛とした娘であった。

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