出会いT 3/3

頭をうったせいか、視界がぼやけて見えた。ナーマエの体は大きな木にぶつかって、ずるずると滑り落ちた。

馬が興奮して、その場で足を踏みならしている。なだめようと思ったが、体がうまく動かない。


――断る理由はございません。喜んでおおせのままにいたしましょう……

ふと耳に聞こえたのは、出発の日の自分の声だった。顔を輝かせる国王の表情とともに、その声は消えていった。

困ったな……。これでは国王様に顔向けできない……。

そんな思いが浮かんで、そのあと頭が痛んだかと思うと、ナーマエの意識はゆっくりと遠のいていった。


しばらくすると、ひずめが地面を踏む音が近づいてきた。

倒れこんだまま、ナーマエがうっすらと目をあけると、黒馬がたたずんでいて、静かに自分を見つめている。

小枝が踏まれて、ぱきっと音を立てた。若い騎士がこちらへ歩み寄ってくるのだ。騎士の黒いマントがひるがえり、ふわりと木漏れ日をさえぎった。

そのマントがひるがえったとき、あたたかい赤い色が、ナーマエの目に入った。その穏やかな色が、彼女の深い意識の中で、なんどもよみがえる。



「だから忠告したというのに。さて、どうしたものか……」

そう言って、黒衣の騎士は沈黙した。

すこし離れたところに、女の馬が、緊張の鼻息を荒げて、行ったり来たりしている。近づいてその手綱を手にとり、顔をかるくたたいてやる。

騎士はふと考えて、地面に倒れた若い女を見下ろすと、静かにひざをついた。

≪prev 
[back]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -