落とし穴 7/7
騎士たちがつくっていた肩車は、高さが足りずに未完成だった。
しかしナーマエが落とし穴に落ちたことで、その問題は解決の糸口を見つける。全員で協力すれば肩車は完成し、ここから脱出することができるのである。
出られないのは困る、ということでナーマエと騎士は手を組むことになった。
踏んだほうからひとりずつ、うめき声が聞こえた。
やっとのことで最後のひとりを登りきり、外に出たナーマエは、すぐに家の裏手に走って荷物から長いロープを取り出した。
再び家の中に戻り、落とし穴をのぞくと、小さなタワーはあとかたもなく崩れ去っている。そこにロープの先を落とすと、騎士たちは切望のまなざしを向けた。
そうしてそれをつたい、ようやく彼らは床下から抜け出たのである。
それにしてもよほど腹が立っていたのだろう。
騎士たちはひとしきり家の中を荒らしまわったあと、思い出したようにナーマエに一礼した。
騎士たちがどこからきたのか、この答えが気になったナーマエは騎士に質問をした。
「われらは王都エクバターナより参った」
騎士があっさりそう答えたので、ナーマエは戸惑った。すぐに言葉を選んでたずねる。
「では、大将軍カーラーン公はどこにいらっしゃる?」
「カーラーンさまは王都におられる。……なにか問題でも?」
騎士がそう平然と言ってのけて、ナーマエは呆然とした。
徒歩で森の奥へと消えてゆく騎士たちの姿をながめながら、ナーマエはその場にしばし立ち尽くしていた。彼女の頭にある疑念が渦巻いていた。
パルスに裏切り者がいるのではないか――。
これが本当であるとしたら、思ったよりも事態は深刻であるし、なによりアルスラーン王子の安否が心配だ。
もしかしたら自分は、パルス内部の亀裂にまで首をつっこむことになるのではないかと、ナーマエの心臓が不安げに高鳴った。