落とし穴 5/7
ナーマエがパルスの大地にたどり着いたのは、つい先日のことであった。
ゆえに、彼女はパルスの現状がどうなっていて、この先、自分が誰を頼ればいいのか、見当もつかなかった。
そこで騎士に、なぜここに捕まっているのか、ナルサスはどこへ行ったのか、このふたつを質問した。すると騎士はそのときの様子を思い出したのか、怒りをあらわにして言った。
「ナルサスは、あの逆賊めが! カーラーン公を侮辱し、われらを罠にかけ逃げさりおったのだ」
騎士の様子にナーマエは驚いた。一方で、首をかしげたくなった。
ナルサスは隠居の身ではあるが、同国の騎士が家をたずねてきたからといって、彼が理由もなく騎士たちをこんな目にあわせるとは、とうてい思えなかった。
ナルサスはひねくれ者だ。けれど道理をわきまえた筋の通った人だとも知っていた。
だから、彼がこんなことをして逃げるからには、なにか大きな理由があるのだと、ナーマエは勝手に決めつけていた。
ふと疑いの気持ちが膨らむ。
――王都はルシタニアの手に落ちたと聞いたのに、この騎士たちはどこから来たのだろう?
ナーマエは不審に思って、壁際にいる残りの騎士たちに目を向けた。そこで彼女は驚きの光景を目にする。
騎士たちは話の間じゅう、いそいそと肩車をつくっていたのだが、その肩車はついに四人目を重ね、小さな塔となっていたのだ。
ナーマエのそばにいた騎士の代表が、ちらりと壁際に視線を送ったあと申し出た。
「ところで、相談がございます」