落とし穴 2/7
ざぶん、と――
落下した。床下からはるか高く、家の天井へと水の音がひびきわたり、泥水の水しぶきが散った。
ナーマエはあまりの衝撃に悶絶しそうになる。水位は思ったよりも浅い。けがをしなかったのは、彼女がよっぽど幸運であったからにちがいない。
「うわっ!?」
「何者だ!!」
「刺客か……!?」
周囲でそんな声がとびかった。暗い床下で波打つ水面はにごっていた。目をあげると、そこには泥で汚れはてた六人の騎士が立っていた。
そんなとき、ふと彼女は故郷で国王から呼び出された日のことを思い出した。
◆
その日のそのとき、ナーマエは大きな城の長い回廊をあわただしく駆けていた。
大広間を抜けて、絨毯を敷きつめた廊下をすすみ、繊細な装飾のほどこされた大きな扉の前で足を止める。
息を落ちつかせて扉の中へと足を踏み入れ、部屋の中ほどまですすむと、彼女はその場にひざまずいた。その部屋の一番奥、玉座にゆったりと腰を沈めているのは、その国の年老いた王だった。
「今日は急に呼び立ててすまんかった」
国王から知らせを受けたのはつい先ほどのことであった。彼女は急いで城へと向かったのである。
「とんでもないことです。どのようなご用件でしょうか?」
短く口を開くと、国王は真面目な顔で答えた。