落とし穴 1/7
旧ダイラム領主の山荘で。
ナーマエの体がぐらっと傾いた。
あれ……!?
足元に異変を感じて、ぎょっとする。そこにあるはずの床板はなく、大きな穴が空いていた。彼女は重力に従ってそのまま深い床下へと落ちていった。
これは絶体絶命かもしれない。
こんなときに脳裏に浮かんだのは古い友人の姿だった。その人物は金色の髪を揺らして愉快そうに笑っていた。
たしかに、考えそうなことかもしれない。
でも、パルスのこの山中の、しかも人の家で、こんなよくわからない仕掛けの落とし穴に落ちるだなんて、そんなのってあんまりではないだろうか……。
そう思った。
けれどそんな思いもむなしく、ナーマエはこのあと現実を突きつけられる。
森の奥、その山荘で、のまれるような激しい水音と、男たちのどよめく声が、彼女のまわりにわき起こった。