そっと触れるを題材にしたのべる


*No.1*


彼の手が愛してると私に告げる。
覚えたての手話を辿々しくしている姿に思わず笑みが溢れた。
彼の手に私の手をそっと重ねる。
暖かい彼の気持ちそのものに触れている気がした。
指先を絡め彼を見て、手を握る力を少しだけ強くする。
私の返事はあなたに届きましたか?





*No.2*


好きな人の手帳を拾った。
いけないとわかっていても好奇心に抗えず、指先で紙の端をそっと摘む。
頁をめくったその先には見知らぬ生徒への思いが綴られていた。
想い人に想い人がいた現実に打ちひしがれながらも、一方で高揚している自分がいる。
私はとうとう彼の秘密に触れた。





*No.3*


私は臆病者だ。
君に淡い恋心を抱いているのにその気持ちを伝えようとしない。
私は卑怯者だ。
幼馴染みという立場を利用して帰り道はこうして君の隣を独占する。
後ろを見ると夕焼けで伸びる二人分の影がそこにあった。
少しだけ手を伸ばす。
私の影の手が君の影の手に触れた。





*No.4*


「俺、思うんだけど」そう言って彼は私の手にそっと触れる。
「こうすると考えてる事が相手に届けばいいと思うんだ。間違いなく伝わるでしょ?」
私はそうでなくて良かったと思う。
もしそれが実現したら君は今直ぐこの手を離してしまうから。
私の秘密の想いにどうか触れないで。

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