tranquillo
灰色の壁。スライドドア。窓はない。
「これが学生証だ。No.001からNo.016は真京市立教育大学附属学校に名義上通うことになる。No.017から…」
一枚のプラスチックカード。これからの名前。
「次に発信機を配布する。常に携帯しろ。紛失した場合は不適合とみなす」
首肯する。
小さな石のついた、鎖。しゃらりと音がする。
「これは連絡用の携帯電話だ。プライベートのものは個人で用意しろ。普段はマナーモードにしておくんだ。わかったな」
軽いプラスチックの塊。白い。白い。
「これで今日は解散とする。2日後の0830にこの部屋に集合しろ」
建物の外へ出た。暗い空。
「終わったか。君にもう一度確認しておきたい。飛行機で私が言ったことを暗唱しなさい」
車の後部座席に人がいた。計画の責任者。
「計画について誰にも悟られないよう行動する」
「悟られた場合は速やかに報告する」
「平時は対象の護衛を行う」
「病気にかからない」
「怪我をしない」
「その通りだ。他は常識の範囲内で自由に行動していい。あれの話し相手にもなりなさい」
首肯する。あ、煙草。
「賢二と真希子が死んだと聞いたときは心底驚いたが…まさかこんなものを…いや、君に言っても詮無いことだな」
煙る。
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