なまえは本当にすごいんだ。すごく格好良くて、色んな事を知っている物知りさん。女の子だけど、おれはなまえに憧れていた。


「おいダメツナ!」

 小学生に上がってすぐ、おれのあだ名は『ダメツナ』になった。何をやっても鈍臭くて、よくドジを踏むから。好きでドジを踏んでるわけでもないのになあ。


「また転んだの?」

 いつもの公園でブランコに跨がっていれば、隣になまえが居てそう言ってきた。何で分かったのかなって思っていたら、なまえは「膝の絆創膏が増えてるから」って苦笑いした。今日は何もない所で転んで皆に笑われて、すごく恥ずかしかった。すごく惨めで、格好悪かった。


「おれ、本当にダメだし…なまえみたいに強くなくて、賢くなくて、何も…出来ない」

ぽたぽたと涙が零れて止まらない。男の子は泣いちゃダメだって言われたけれど、涙の止め方なんて知らなくてただ泣きじゃくる。そうしたら、ペチンと頭を叩かれて反射的に顔を上げた。


「何も出来なくなんてない」
「……、…」
「強くなりたかったら強くなれるし、賢くなりたかったらいっぱい勉強すれば良い」
「…なまえ?」
「でも、最初から諦めたら…何にも出来ないんだよ」

 なまえはただ無表情でおれの瞳を見つめていた。だけど何故だかなまえが悲しそうに見えて、おれはごしごしと服の裾で涙を拭いて笑ってみせた。


「おれ、少しずつだけど頑張ってみる」
「……うん、頑張れ」

やっと笑ってくれたなまえにおれはホッとした。なまえにはいつまでも笑っていてほしかったから。そうしたら、本当に無意識におれはなまえの手に触れた。なまえは一度驚いたような顔をしたけれど、直ぐに笑って握り返してくれた。


「綱吉の手は暖かいね」