よく夫婦で5歳差というのを聞く。そんなに差がないように思えるけど、私からすればかなりの年齢差。だって私はついこの間まで小学生だった13歳、彼はもうすぐ社会に出る18歳。

ね?


「ツナお兄ちゃん」
「なんだ?」
「あれって」
「あぁ、今日貰ったやつか」

部屋の片隅にある紙袋。その中には可愛らしくラッピングされた誕生日プレゼントが山のように入っている。学校でのお兄ちゃんの評判がよく分かる。


「相変わらず外ではお人好しね、断らないなんて」
「ちゃんと中身は見るよ」
「え」
「そんでもって金目の物は売る」
「…ひどいことするね」
「可愛い彼女のためなら俺はなんだってするよ」


呼びかけると背中からぎゅっと抱きしめられる。そうすれば彼より小さい私の体はすっぽり彼の中に入り込んだ。


「なまえはあったかいよなー」
「子供体温って言いたいの?」
「うん」
「もー、プレゼントあげないよ」
「なまえのぬくもりが俺には十分なプレゼントだけど」
「なんかそれ複雑…」
「はいはい、拗ねんなって」


片手を外すと頭をいい子いい子するように撫でられた。もろに子供扱いだけど、撫でられるのは好きだからこれまた複雑。

やっぱり私は子供なのかなぁ。


「まあね」
「ひどい」
「また拗ねた」
「ツナお兄ちゃんがそうやってからかうから!」
「なまえこそそうやって俺を呼ぶから」


私は彼を「ツナお兄ちゃん」と呼ぶけど兄妹ではない。れっきとしたカップル。
小さい頃からの癖もあるけど、わざとこう呼び続けているのもある。

だって──


「子供扱いされたくないんだろ?」
「されたくない、けど」
「けど?」

横からなまえの顔を覗きこむも、口を尖らせたままそっぽ向かれてしまった。

少し意地悪が過ぎただろうか?
好きな子をからかう俺もよっぽど子供だ。


しかしそれでも、ただの幼なじみから彼氏彼女の関係になったのだから、普通に名前を呼べばいいのに一向に呼ばない。(いや「お兄ちゃん」と呼ばれるのが嫌なわけじゃないんだけどさ)


「だって、」

なまえが不意に口を開いた。
部屋の隅に置かれたままの紙袋をチラリと横目で見て、話し出す。


「ツナお兄ちゃんのこと、ツナお兄ちゃんって呼べるのは私だけだもん」


話し方はとってもお子様的で、だけれども中味は立派な独占欲。
さあ、困った。
ただでさえ君に溺れているのにこれ以上溺れてしまう俺は、


「あーあ、大丈夫かな」
「何が?」
「なまえを大事に出来るかどうかってこと」
「ツナお兄ちゃんたらおかしなことを言うのね。私、大事にされてるよ」
「……それがいつまで持つかって話だよ」
「よくわかんない」
「じゃあ一つだけヒント。この意味が分かる時、なまえはきっと寝転がっているよ」
「なにそれー?教えてよー」
「まだダーメ」

君が俺を「お兄ちゃん」と呼べなくなる日まで、この日々を堪能しよう。


独占症×依存症


(意味を理解したのは、三年後の私の誕生日)