世界征服狂走論 ヒナちゃん | ナノ
昼間の街は、夜よりも当たり前に明るくてずっと静だった。
日差しが 風が 透き通るように髪とスカートのすきまを抜けて
ああ、また夏が来たなあ、なんて
雀はキラキラ鳴いて空へ飛び立って、陽光にまどろむのは無邪気な白猫。
天気がいい。これを快晴って、表現するんだ
いろんな匂いが交ざり合う交差点の横断歩道も太陽があるから白く輝いている。
いつか歩き慣れていた道を通ると、見えてくるのは、変わらない風景。
懐かしい温度の風が吹く。
「うわ、長い髮って、風に吹かれるとまじでサラッて音すんのな」
思わずそう言った君のこと思い出した。
いやたぶんそれは、靡いた髮が肩にかすった音で。
……ていうか、あんたは距離が
「近いんだよバーカ」
まぶしい光がアスファルトを照らす。木々を照らす。服を、指を。思い出を照らす。となりには誰もいない。
夏が好き。鼓動が血液が脳味噌が、世界をめぐるように騒ぎ出すから。
これで此処から、バスケットボールが踊る音とひかえめなスキール音と、そうだな、サッカーボールが宙に浮く音と声援。あと、あの日々にたしかに追いかけたチャイム。
それが聴こえれば、もっといいのに。
「あつい」
快晴。明るい。まぶしすぎて涙が出そうだ。
時計は今もあそこで時を刻んでる。あの夏のことを思い出す。なんて言ったっけ、大人になったら、だっけ。それとも、あれ。ああ。
「征服、しなくちゃ」
懐かしい学舎を通りすぎて足を進める。約束したのはいつだっけ、どこだっけ。あそこかな、と空を見上げる。
雲が少ない。今日も空は快晴だ。