微熱を帯びる 魚水(蒼天)


珍しい、そして出来るだけ避けたかった相手と偶然居合わせてしまった為に、酒の席を共にすることになってしまった。

たまには一人で静かに酒でも飲もうかと適当に目に付いた酒屋に入って、しっとりと一人酒を楽しんでいたところに、いつものあの軽いのか重いのかよく分からない調子の声が聞こえたのだ。そしてあちらから寄ってきたうえ有無を言わせず向かい合わせに座ってきたので、やむを得なく貴重な一人酒を諦めることになった。

最悪だ、と胸の内で毒づきながらも酒を飲み進めながら、気味の悪い笑みを絶やさず浮かべている孔明を見やる。こいつのこの体躯と性癖からさぞかし酒癖も悪いのだろうと酒屋を出る時の酒代のことを考えると、思わず溜息が漏れた。
益徳だけでも馬鹿にならん酒代がかかってるというのに。いざとなったら止めにかかんないとな。そう企みつつ、孔明の様子を隙を見ては伺っていたが、意外なことに孔明はどこか酒屋の内装を眺めつつ喋くるばかりで、たまに酒を口に運ぶ程度であった。

心外な孔明の様子に企みも忘れて見入っていると、ふとこちらの視線に気付いたのか、ばちりと三つの瞳と目があった。

「どうかしましたか、玄徳様?」

怪しく笑う三つの瞳に、呑み込まれそうになった。ひたりと背に冷たい汗が伝う。その妖しい眼光から逃れたくて、急いで目を逸らす。

「やっぱ気味わりぃな、お前」

そういう性分な為、酒を一気に飲み干してからきっぱりと言ってやると、孔明はひどい、と喚き杯を強く酒屋の安っぽい机上に叩きつけた。

「突然何を仰るんです。私は何も、」
「やっぱお前と酒なんて飲むもんじゃないな。せっかくの酒と肴が不味くなっちまうぜ」

な、と言葉を詰まらせわなわなと肩を震わせる孔明を尻目に、劉備は席を立ち上がる。
ふと酒代のことが引っかかったが、まだそんな高値にはなっていないだろうし、孔明の奴に任せることにした。とにかくどこか他の酒屋を探さねえと、あいつの所為で全然飲みたりねえ。はあ、めんどくせぇ。


一瞬目があった時、気味悪くも何故だか三つの瞳に魅力を感じてしまった自分に悔しさを覚えながら、劉備は孔明を残して酒屋を後にした。







劉備はとにかく孔明と一緒にいたくなくて酒代のことも忘れて店を出て行きましたとさ。でも孔明がその後すぐ劉備の分も払って玄徳様〜!って追いかけてきて劉備もげって言って即逃げるという。はあ魚→(無自覚)←←←←水可愛い。
あ、これ魚水です。紛れもない魚水のつもりで書きました・・・よ・・・!^^




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