「カービィちゃん、誰を探してるの?」
「フーム!」
「フームさん? 一緒に探そうか」
「ぽよ!」
 カービィちゃんは一人で施設内を歩いていた。メタナイト卿と同じ魔獣で私たちの仲間だ。フームさんをお母さんのように慕っていて、フームさんも大切な子供のように接している。一度だけ一緒に魔獣を倒したことがある。フームさん曰くカービィちゃんはまだ赤ちゃんだから物事を判断することが難しいらしく、カービィちゃんはフームさんの指示に従って戦っていた。魔獣というだけあって、カービィちゃんの強さは本物だ。
 私はカービィちゃんと一緒にフームさんを探す。カービィちゃんにフームさんがいそうな場所を聞いたけど、「ぽよ」と言うだけで何も分からなかった。私はフームさんが出入りしそうな場所を徹底的に探す。通りすがりの職員に聞いてみると、フームさんはお偉いさんと話している最中らしい。ならばとメタナイト卿の居場所を聞く。職員はメタナイト卿の居場所は分からないと首を振った。私はお礼を言ってその場を去る。
「カービィちゃん、メタナイト卿がいつもいる場所分かる?」
「……ぽよ!」
 メタナイト卿は施設に住んでいるが、ほとんどの人がその場所を知らない。でもメタナイト卿とかかわることの多いカービィちゃんならきっと分かるだろう。私はカービィちゃんの後を追いかける。施設の中を探索するのは初めてかもしれない。戦闘要員である私は専用の部屋以外に寄る部屋はごく僅かだ。施設の奥になればなるほど職員のみが使うような部屋がたくさんある。
 人通りのない通路にたどり着く。目の前にはドアがある。この先は幹部クラスの人か魔獣部門のスタッフのみが入れる空間になる。私はただの戦闘要員なのでこの先に入ることはできない。メタナイト卿の部屋はこの先にあるのだろう。私はカービィちゃんを見る。都合よくメタナイト卿がカービィちゃんの存在に気づいてくれたらありがたい。デジモンの気配は分かるのに魔獣の気配はよく分からない。
 試しにドアを開けてみる。案の定ビクともしない。カービィちゃんがドアを開けようとする。私は成り行きを見守る。カービィちゃんはいともたやすくドアを開けると、私も入れようと手招きする。入りたい気持ちはあるけど、本来私が入ってはいけない空間だ。私は首を振る。カービィちゃんは私の手を掴もうとする。
「カービィちゃん、私はこの先に入っちゃいけないの」
「ぽよー」
「気持ちだけね。ありがとう、カービィちゃん」
 未だにメタナイト卿の姿が見えないということはどこかで戦っているのかもしれない。カービィちゃんはしばらく困った顔をする。フームさんが可愛がる気持ちが分かる気がする。彼はまだまだ子供なのだ。純粋で、喜怒哀楽がはっきりしていて、誰か一緒にいないとちょっぴり不安。だけど、カービィちゃんの瞳はいつも輝いている。カービィちゃんはまた廊下に出て私の手を引っ張る。開けっ放しにしたドアは自動で閉じた。
「ちょっと待って!」
 カービィちゃんは私の言葉を無視する。いったいどこに行くのだろう。私はおとなしくカービィちゃんに案内されることにした。さきほど通った道をまた通る。カービィちゃんは「ぽよぽよ」言いながら足取り軽く歩く。本来私はタケル君と一緒に仕事に行く予定だったが、昨日まで体調を崩していたので施設でタケル君の帰りを待っている最中だった。暇つぶしに廊下を歩いていたら迷子のカービィちゃんに出会って現在にいたる。
 着いた場所は中庭だった。太陽の光が差し込んでいる。閉鎖的な施設内で数少ない開放的な空間だ。私は首にかけているデジカメを取って、カービィちゃんの写真を撮る。カービィちゃんはシャッター音にびっくりして私をほうを向く。私はカービィちゃんに謝ってもう少し写真を撮らせてほしいとお願いする。カービィちゃんはデジカメが気になるのかそばに来てデジカメをじっと見ていた。
 私はカービィちゃんにデジカメの使い方を教える。私が試しにシャッターを切ると、やっぱり音に慣れていないようで肩をびくっとさせる。私はメニューを開いて消音設定にした。こうしたらシャッター音が出ないからカービィちゃんがいちいちびっくりしないで済むだろう。
「メタ!」
「……ん?」
 ようやくメタナイト卿が現れた。カービィちゃんはメタナイト卿がこちらを向いた瞬間を狙ってシャッターを切った。仮面を身に着けている状態なのが非常に惜しいが、初めてにしてはシャッターを切るタイミングが合っていたと思う。私はメタナイト卿に会釈をする。メタナイト卿も中庭に来た。
「このカメラは?」
「私の物です。びっくりしました?」
「多少はな。カービィ、持ち主に返すんだ」
「ぽよー」
 デジカメが私の元に帰ってくる。私はカービィちゃんの頭を撫でた。せっかくだからカービィちゃんが撮ったメタナイト卿は大切に保存しておこう。時間があったら現像してフームさんに渡してみようかな。カービィちゃんはメタナイト卿に何かを話している。私はカービィちゃん語が分からないから何を言っているのかさっぱり分からないけど、メタナイト卿は何を言っているのか分かっている素振りをする。ときおり頷いたり相づちを打ったりしている。
 話を聞き終えたメタナイト卿はタケル君が部屋で待っていると私に言って、カービィちゃんとどこかに行ってしまった。カービィちゃんは最後に私にお辞儀をしてメタナイト卿の後ろを歩く。その光景がお父さんと子供が一緒に歩く姿に見えて、私は思わずシャッターを切った。どうやら今日は私の代わりにメタナイト卿がピンチヒッターとして選ばれたらしい。謎が多いメタナイト卿だけど、少しだけ彼のことが分かったような気がした。

カービィ探検隊
八神ヒカリとカービィ



ちゃん呼びなのはなんとなく。メタナイト卿はほとんどの人が知らなさそう。とりあえず魔獣なのに自分たちの味方だからいて害はない、っていうぐらい。カービィが来てからはパパナイト卿w
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