良薬?(巽がひめるに薬盛る話)
「HiMERUさん、今日これ試してみませんか」 巽はキスの合間に小さな錠剤のシートを見せてきた。 「んっ巽。それはなんですか」 パッと見た感じだと市販薬のような見た目のそれに目を向けると巽は徐にプチッとプラスチックの包装を押した。 「HiMERUさんが素直になるお薬ですな」 大丈夫、危険な薬物の類ではありません。などと曰いながら口元に錠剤を持ってくる巽を避けようとするがもう片方の手で顔を抑えられてしまった。 「巽、やめなさぐぐぐぐ」 「はい、あーん、ですな」 文句を言おうと開けた口に錠剤を押し込まれる。しまったと思う頃にはもう遅い。口元と鼻を押さえられ苦しくて飲み込んでしまった。喉の嚥下を確認した巽の手が離れる。 「ぷはっ。な、何するんですか!?」 「これを飲めば普段素直でないHiMERUさんもたちまちに気持ちいいことが好きになりますよ」 そう言って巽はHiMERUの身体を好き勝手弄る。手の感じは普段と変わらない気がするが一体なんだっていうのだ。 「?特に感じませんが?」 「すぐに効いてきますよ、催淫剤」 「は?巽なんてものを!?あっ…」 「ふふ、感じてきましたな」 「あ、そこはっだめだって……あぁンっ」 「そこは気持ちいい、でしょう?HiMERUさん」 ガッと耳に鋭い痛みが走る。巽に耳を噛まれたのだ。でもそれすら薬の効いてきたHiMERUには十分すぎる快感だった。 「あぅ…っ、たつみぃ、耳はだめですぅ」 「意外と強情ですな。ではここは……」 「ヒィ……っ」 今度は乳首を強くつねられる。普段はくすぐったいぐらいなのに今日は電流が流れたかのように身体が跳ねる。こんなの、こんなのHiMERUじゃない!ギリっと巽を睨み付けるが目にはうっすら涙の膜が張っており巽は満足そうに目を細めただけだった。
慣らされてる時もいつもより気持ちよくて何度もイってしまった。薬が完全に効いてしまったようで身体にうまく力が入らない。 「巽、もう……」 自然とねだるような視線を向けてしまう。巽は意地悪そうに微笑み、なんでしょう、とだけ返した。指はまだ抜かれない。 「言ってくれないとわかりませんよ。HiMERUさん」 耳元で楽しそうに囁く巽の顔は見えない。見えないがきっと腹の立つ顔をしているのだ。悔しい。なんでこんなことに。 「巽っ、もう指はいいから……」 巽の頂戴。と巽を求める言葉を漏らしてしまう。もうなんとでもなれ。だってこれは本当に、逆らえないほど気持ちいいのだから。 「はい、HiMERUさん」 巽は弾んだ声で指を抜き、入れる準備に取り掛かる。あっそのまま入れて、なんて思ってしまう浅はかな自分がいるのが信じられなかった。 「巽、ゴムいいから早くっ」 「HiMERUさん、でもそれでは明日に…」 「いいから!いいって言ってんだろ、馬鹿」 こんな時まで聖人ぶるなよ。恥も外聞も捨てて求めてしまうのは全部、全部薬のせいだ。だからこれも俺は悪くない。全部巽のせいなんだ。 そう思うと少し気が楽になった。がなったのは一瞬のことですぐに巽のものが侵入して息が上がる。苦しい。でも普段の慣れない圧迫感とか違和感とは違う。完全に快楽しか感じない。快楽が全身を支配する苦しさだ。巽のものが全て収まり切る頃にはHiMERUの身体は完全に快楽に支配されていた。 「はっ巽…全部、入った?」 「はい、HiMERUさん、次どうして欲しいですかな」 巽が入り口でゆるゆると腰を動かす。決定的な刺激にならないようゆるゆると焦らす動きに我慢できず、もっと先を求めてしまう。 「巽っもっと、もっと奥突いて、激しくしてください」 言ってしまった。しまったと思う前に巽は動きを変えてHiMERUを駆り立てるような動きにシフトしてきた。だ、だめだ。そんなの気持ちよすぎるッ! 「巽!あっ…あ、そこだめです」 「HiMERUさん、だめではないでしょう。気持ちいいならいいと言ってくださらないと」 「あぁ、巽、気持ちいい!気持ちいいからぁ…」 激しくしないで…さっきと矛盾したことを言ってしまう。でもそんなにされたらまたすぐイってしまう。それじゃあ巽がイくまで身体がもたない…… 「HiMERUさんは素直じゃありませんね」 でもそんなところも可愛いですが、と言いながら攻める動きは止まらない。 「イく!イっちゃうから巽!あっ…くっ、はぁ」 「HiMERUさん……ッ」 巽から与えられる快感をあますところなく受け止めてHiMERUはなけなしの理性も全て手放した。
翌日
朝、ふとゴミ箱を見ると市販薬のようなゴミが目についた。取り出すと小箱にビタミン剤と書いてある。中には見覚えのある錠剤のシートが入っていた。 「おや、見つかってしまいましたな」 コーヒーを持ってきた巽と目が合う。見つかる、見つかるってなんだ。どういう意味……? 「巽、それどういう意味ですか」 「大事なHiMERUさんに怪しいものを飲ませるわけにはいきませんからな」 「え、じゃあ昨日のあれは……」 「はい、ただのビタミン剤です」 顔がボッと燃え上がるのがわかった。昨日あんなに気持ちよく感じたのは薬のせいではないということか。だってそれじゃあまるで…… 「昨日のHiMERUさん、大変可愛らしかったです。いつもあれぐらい素直だと嬉しいですな」 「たっ巽いいいいい」
おしまい
良薬?
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