「……なまえ、調子はどうだ?」 「…………」 「先程まで青学の奴等が来ていたらしいな。」 「…………」 「……なまえ、……。」 ―生きていてくれて、良かった― それが例え、意識のない状態だったとしても。 柳はぐっと唇を噛んだ。なまえの事故から、かれこれ二ヶ月は経過していた。 ―娘さんはもう、とっくに怪我は完治しています。― ―なら!なまえはなんで目覚めないのですか!― ―落ち着くんだ。お医者さんを困らせたって…なまえがどうこうなる訳じゃないだろう?― ―……恐らく娘さんに意識が戻らないのは…娘さんの意思なのかもしれません― なまえの見舞いにやって来た柳は、偶然なまえの両親と医師の会話を聞いてしまった。 ―なまえの意思…― 原因は確実に自分だ。柳は目頭をそっと抑えつけた。やっとなまえを好きだと気付いたのに、無情にも世界は柳からなまえを奪い、体だけ寄越したのだ。 自分のあの一言が、重くのし掛かる。 “失望” 乾に対して、またなまえに対しても投げたこの言葉は、倍の威力となって自分へと返ってきた。 外から聞こえる車のクラクションが当時を思い出させる。 「……なまえ、すまない。俺はお前を散々傷付けておいて今更…お前を好きだと気付いた愚か者だ。お前がもし、一生目覚めなくとも…俺はお前を…。」 酷く切ない顔で、柳はなまえの頬をゆるりと撫でた。 真っ白な寝具に包まれて眠るなまえは今にも元気に起き出しそうなくらいに見えた。しかし、腕には夥しい点滴の跡と、その中心から伸びるチューブが痛々しかった。 back ×
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