「おはよう」
「おはようございます」
正門の所で挨拶している先生の側を通り過ぎ、ふっと空を見上げる。天気は曇り。道理で髪の毛が纏まらないと思った。
昨日までと違い身が切れるような寒さだ。学校指定のマフラーに顔を埋めると、余計に髪がくしゃりと崩れた。
「……ちっ。」
「みょうじさんっ!」
突然後ろから現れた存在に、私はもう一度舌打ちをしたくなった。
「やっぱりみょうじさんじゃった!」
「おはようさん」
「今日もいい天気じゃのう」
「その……可愛い、ぜよ。」
「ふーん」
いい天気、ねえ。少し頬を染めて、綺麗な顔をこちらに向ける仁王雅治は自分がどれだけ注目を集めているのか分かっているのだろうか。
分かっていてこのような態度ならば、後頭部の尻尾を引きちぎってやろう。
案の定こそこそと私の名前がそこかしこで呟かれる。どうせ下駄箱には幼稚な嫌がらせを仕掛けてあるのだろう。
「……やっぱりね。」
「、みょうじさん…誰じゃ!こんなことするのは…みょうじさんに危害を加えるやつはタダじゃおかないぜよ!」
こんな毎日の繰り返しに私は辟易している。
全ては仁王雅治、こいつが居なければ私の平穏な毎日は保証されていたものを。
今日も一つ増えた絆創膏に溜め息を吐いた。