私みょうじなまえは只今人生初の“壁ドン”なるものを学校のアイドル的存在である糸目の柳君から強制的に体験させられています。誰か助けて。

「これでお前が俺から逃げられる確率はほぼ0に等しくなった訳だが…」

にやり。漫画だったら柳君の顔の横にそう描かれるだろうその言葉はまさしく今の柳君にぴったりだ。

以前からちょくちょくちょっかい(という名の精神的ないじめ)をされていたがまさかここまでするとは。
初めてあったときから柳君には苦手意識しか感じていなかった私は、勿論今もそれ以外の意識は持ち合わせていない。だって怖いじゃん。糸目。

本が好きな私は図書室に居ることが多く、最近は歴史についての本にハマっている。歴史についてなんて興味を持つ中学生なんて限りなく少ない訳で、図書室の奥の目立たない所に置いてあるが、あまり選んでいる所を見られたくない私にはそれが好都合だった。
さんざん悩んだ挙げ句決めたのは「真田幸村」についての本だ。何故かと言われれば大した理由はないのだが、強いて言えば運命的な物を感じたから…何をいっているんだ自分。

決まったならばと本に手を伸ばすが、背後から伸びてきた腕によってそれは出来なかった。

「ほう…真田幸村、か…何故この本を選んだのか是非とも聞かせてもらいたいものだな」

聞き覚えのある、出来れば聞きたくなかった声が突然聞こえ、がばっと振り向けば、やはり柳君だった。私が読みたかった本を手に取り、ゴツい男の人が描かれた表紙をじろじろ眺めており、心なしかいつもより糸目に磨きがかかっている、気がする。

「や、柳君…」

体の芯から冷えていく感覚を覚えつつなんとか声を絞り出すと、柳君は何も言わずにその本を私に手渡した。

「あ、あり、がと。」

何か嫌なものを感じた私はそれを引ったくるようにして受け取り直ぐ様カウンターに持っていこうと駆け足の姿勢に入るが、トン…と目の前に突かれた腕のせいで進むことは出来なかった。

という訳で助けてください。

顔の両側に置かれた腕は軽く叩いても下ろされることはなく、ならばとしゃがんでくぐり抜けようとするが足の間に膝を割り入れられ、却って状況を悪化させてしまった。これはヤバイ。体勢だけなら恋人同士にしか見えないだろう。(顔面偏差値的には絶対に有り得ないけど)

つぅ、と冷や汗を一筋垂らした私が柳君を見つめ、冒頭の状況が出来上がったのだ。

「柳君っ、いきなり何なの…?こんなとこ見られたら私もだけど、柳君も変な誤解受けちゃうんだから離れよ?」

「俺は別に構わない。むしろ……」

そう言って段々と顔を近づける柳君に私の思考回路は完全に止まった。酸素を求める魚のように口をパクパクさせていると鼻と鼻がくっつきそうな距離にまで迫っていた。あ、睫毛すごく長い。そんな場違いな事を考える辺り私は相当混乱しているようだ。
かと思えばゆっくりと柳君の瞼が持ち上がり、普段は見ることができない瞳が姿を表し熱っぽい視線が私の両目に直に映った。

そのまま柳君は私の耳元に口を寄せて色気をたっぷりと含んだ声で息を吹き掛けるように囁いた。

「なまえが俺を好きになった確率、99.9%」
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