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『ただーいまー…誰もいないけど。』
いつもみたいに仕事を定時に終えて、いつもみたいにコンビニで晩御飯買って、いつもみたいに誰もいない家に帰って、またいつもみたいに仕事にいく。そんな毎日を過ごしていた。
今日もいつもみたいに靴を脱いで部屋の明かりを点けた。
『……あれ、こんなに物置いてたっけ』
きれい好きな訳ではないけど、片付けるのが面倒だから床にはなにも置いてないはず。
まさか空き巣?
荷物を放って部屋中の戸締まりを確認するが、密室状態で鍵が開いていたり、窓が割れていたりというのはなかった。
となると、考えられるのは2つ。
私が忘れているだけなのか…それとも、「動くな…」
まだ、犯人が家の中にいるか。
どちらかなんて考えるまでもなく、後者だったようだ。
首に冷たいものが当てられて背筋が粟立つ。
怖い。殺されてしまうのか、それとも………。
「質問に答えろ。少しでも妙な動きを見せてみろ…」
ぐっ、と刃物を押しあてられて情けない声があがる。
「ここは…どこだ」
『え?』
あまりに的外れな問いに一気に脱力してしまった。が、刃物を持つ手に力が籠ったのを感じて急いで姿勢を正した。
『こ、ここは、日本の…○○っていう所です…そ、それで…私の家、なんですけど…』
掠れた声で伝えると後ろの空き巣が息を呑んだような、そんな音が聞こえた。
「……聞いたか、イタチ…」
「あぁ…」
『い、イタチっ?』
「「っ!?」」
今イタチって言ったよね!?
え、なんで?実際にそんな名前の人いるわけないよね!?
まさか、そんなこと…
あるわけが…
「動くなと言ったはずだ」
『ええええええ!?』
サラサラツヤツヤの漆黒の長髪に長い睫毛に皺。
そして隣にはぐるぐるのオレンジ色のお面に穴から覗く紅い瞳の男。
『な、な、なんで!?』
ここ3次元ですけど!?それに私NARUTOとかよく知らないんですけど!!友達がイタチとトビ好きでちょっと知ってる程度なんですけど!?
「?……なんだこの女…それよりイタチ、どうやら失敗したようだ。」
「そんなこと見ればわかる。……どうするんだ」
茫然と二人の姿を見ていると、二人は物凄い勢いで此方を向いた。
『……ひっ!』
「女、名は何という」
これ、すっごく嫌な予感がする。
けど無視するとあとが怖い。
『あ、の…なまえ、です』
「……なまえ、暫く俺達を養え」
『え』
「嫌とは言わせない」
チャキ…持っていたクナイをちらつかせる二人に当然嫌だとは言えず、私の日常は突然の来訪者によって崩される事となった。
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