ネタ | ナノ

歪みに歪んだ王子様


「ほら皆静かにしろー、転校生を紹介するぞ」

「名字名前です。人見知りですが、皆さんと仲良くしたいです。よろしくお願いします。」

ここ(氷帝学園)での始まりは、自己紹介だった。

「おい名字、ついて来い」

「お嬢さん、ちょっとええか?…あぁ、俺、忍足侑士っちゅーねん。一応お嬢さんより1個上やで。」

氷帝学園に転校してから1週間経ったある日のこと、私は学園内で人気らしい男子テニス部の先輩と、同じくテニス部で同じクラスの日吉君が帰りのSTの後にやってきた。
昨日は確か、おーとりっていう銀髪の人で、その前は…芥川…龍之介……みたいなのだっけ。

なんなんだこの人たち転校早々女の子に目の敵にされそう。
転校初日、私は沢山の女の子達に囲まれて我が校のテニス部が如何に神聖か、むやみやたらに近付くとどうなるかを聞かされた。
それなのに、だ。あんなに忠告を聞かされたにも関わらずこの状況、何とかしてほしい。

クラスメイトたちの視線に耐えきれず渋々二人についていった私は後に後悔することになる。

着いたのは生徒会室。

「跡部がお嬢さんに会いたい言うとるんや」

「は、はあ…?」

「ま、ええから入り」

シンプルに豪華な扉を開いて私の背中を押した眼鏡の先輩からはなにを考えているのか読み取ることが出来ない。

押されるがまま部屋の奥へ歩くと数人の男の子がソファに腰かけていた。全員、この1週間で私のもとに来ていた人だった。

一体なんだ。この異常なイケメンパラダイスは何故私の周りで存在する?イケメンなんて爆発すればいいのに。

「あ、あの…何かご用ですか?女の子が怖いので出来れば私に関わらないで欲しいんですが…。」

「っお前…ククッ……ハーハッハッハッ!決めた。記念すべき初ターゲットはテメェだ」

な、なに…キチガイ怖い。
思わず一歩後ずさると、ぽすん、と背中に何かがぶつかった。……嫌な予感。

振り向くと目の前には氷帝学園指定のネクタイ。ゆっくり目線を上に持っていくと青い襟足、薄い唇、通った鼻筋、丸い眼鏡…

「どうしたん?まだ話は終わってへんで?」

にやり、と弧を描いた口元を見た瞬間、背筋が凍った。

咄嗟に胸を突き飛ばして離れようと試みたものの、伸ばした腕を捕られ、逆に引き寄せられてしまった。

「わ、私!もう…失礼しま、」

「おっと、!逃げることないやん。お嬢さん、皆と仲良うしたいんやろ?俺等とも仲良うしようや」

ぐぐっと顔を近づけられ、慌てて誰か助けてはくれないものかとそもそもの元凶っぽい日吉を見るが、体ごと背を向けられてしまった。

――長いので省略――

「よっ!名前ー、遊びに来たぜ!」

教室のドアから顔をひょっこり覗かせて満面の笑みで軽く手を振った向日先輩は、女子の熱い視線を無視して一直線にこちらにやってきた。

「ど、どうも……」

顔がひきつっていたかもしれない。
向日先輩の表情が一瞬だけ、消えた。
かと思えば、今度は“黒笑”と世間では表現される笑みを浮かべた。にっこり。

――キャァァァァァァ!!

女子の悲鳴が聞こえて気付いた。

向日先輩のサラサラな髪の毛が私の頬に触れて、華奢に見えて程よく筋肉のついた腕が背中に回されて。

「なっ!何してるんですか!?離して下さい!」

もがけばもがくほど回された腕に力が込められて痛い、苦しい。

向日先輩が顔を私の耳元に寄せたような気がした。

「精々、楽しませてくれよな」

ふっ、と笑い声が聞こえてまもなく向日先輩は私を解放した。ぎゅうぎゅう締められた(あれは抱き締めるとは言わない)割りに、向日先輩の腕は冷たかったように思える。

軽快なステップで教室を出ていった向日先輩の後ろ姿を見て、私はこれからの生活に絶望した。

省略の所でかなり凝縮しました。
展開が早すぎましたねすみません。

……と、まあこんな感じの連載をしてみたいです。はい。



2014/06/22 15:37



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