人間って真っ二つになるのね。あまりに衝撃が大きくて、悲鳴すらあげられない。私の目の前で真っ二つになって血を吹き出しているのは、友達である彼。さっきまで彼だったはずなのに、もうピクリとも動かない。
(あ、あ…。う、そ、カネダ)
いまさらになってやっと、思考回路が動き出す。口元に手を当てて震えるしかない私。タミヤなら、こんなときどうするの。目の前に広がる恐ろしい光景に彼の愛する人の名前を浮かべていた。



あれから数日が経ち、カネダの死は事故死ということで片付けられた。私たちは誰一人本当のことは言えず、口裏を合わせるしかなかったから。
「タミヤ」
放課後の教室で一人じっと座るタミヤの姿を見つけ声を掛ける。一瞬だけ私に視線を向けたがすぐに逸らされてしまう。彼にとったら私もカネダを殺した敵なのだ。
「ごめんなさい」
「…なんで雷蔵が謝るんだよ」
「だって私はカネダを助けられなかったから」
「だれもゼラには逆らえない。お前だってわかってるだろ」
「でも…!」
カネダは大切な友達だった。根暗で、引っ込み思案でいつも無理矢理連れ回していたけど私にとっては大事な存在だった。だけどタミヤは私以上にカネダを大切に思っていたはず。幼馴染としてだけじゃなく、それ以上の感情があったはずなのに。
「…悲しいのよ、こんな形で別れるなんて…思わなかったから。タミヤだってそうでしょう?」
「悲しくなんて、ない…」
タミヤは俯いて呟くような小さな声で「…カネダは…死んでない。死んでなんか…ないんだ」と続けた。嗚咽の混じる声。泣いているんだ、と思った。きっとわかっているはずなのに、もうカネダは帰って来ないって。それでもタミヤは何度も「悲しくない、カネダは死んでない」を繰り返す。そうしないと心が壊れてしまうから、タミヤは自分を護ろうと必死になる。それほどにカネダの存在は大きかったのだ。
「…ええ、そうね。きっと死んでない。私も信じてる」
私の言葉にタミヤは顔を上げる。私ができることなんてなにもない。ただ、カネダが愛した人をこんなところで壊してしまいたくなかった。わかりきった嘘だったとしてもあなたへ届いてくれたらと、願うだけしかできない。


悲しくなくても泣けるのね
title by たとえば君が
2013.0129

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