―ガタンッ!
物騒な物音に驚いて飛び起き、時計を見ると深夜の2時。
ああ、そういえば今日は…。

「ちょっとタミヤくん、タミヤくん。大丈夫?」
「んあー、かねだぁ」

玄関に倒れ込んでいるタミヤくんに駆け寄ると、僕は思わず怪訝そうな顔をしてしまう。

「うっわ、酒くさ…飲み過ぎだよ、タミヤくん…」
「そんなことねぇよーははは」
「いやいや、相当酔ってますよ」

タミヤくんは会社の飲み会だったらしい。「遅くなる、ごめんな!」と言って家を出たから予想はしていたけど、ここまで酔って帰ってくるとは…。すっかり油断をした。

「タミヤくん、こんなとこで寝たら風邪ひくよ。ほら」

無駄だとはわかりつつ体を揺すってみる。お酒強くないんだからそこまで飲まなきゃいいのに。いまさら言っても遅いけれど出て行く前に強めに言っておくんだったと少し後悔した。

「はい、お水。これ飲んで布団で寝てよ」

水をテーブルに置くと、布団を敷くために立ち上がる。タミヤくんは急に真面目な顔で「りく」と僕の名前を呼んだ。

「なに、タミヤくん…」

振り返ろうとすると後ろから腕を回される。タミヤくんが僕を後ろから抱きしめたのだ。

「りく」

「なに、どうしたのタミヤくん」

「お前も俺のこと、いつか嫌いになるのかな」

「…今日は何があったの」

タミヤくんはときどき慣れないお酒を飲んで泥酔することがあった。そういうときは決まってなにか落ち込んでいたり失敗をしてしまってへこんでいるときなのだ。

「会社の先輩たちが言ってた。ある程度の時間が経つと一緒にいるのが当たり前になるって。だから一緒にいて幸せとか楽しいとかそういうのなくなるって。それが義務みたいに感じて浮気したりするって」

それを気にしてそんなに酔っ払って帰ってきたのか。まったくもう、子供なんだから。

「タミヤくん」

「な、に…」

とうとう泣き出してしまったタミヤくんに向き直り僕から抱きしめてやる。まるで小さな子供をあやすように、昔いじめられて泣くたびにタミヤくんがそうしてくれたように背中を撫でる。

「僕は嫌いになんてならないよ。タミヤくんだってそうでしょ?」

「あったりまえだ、ろ!」

「だったら大丈夫。僕たちはずっと一緒。ずっと一緒にいるよ」

タミヤくんに言い聞かせているようだけど、自分にも必死で言い聞かせる。不安なのはタミヤくんだけじゃないんだよ。僕だって、君が好きで好きで、だけどどこかに行ってしまうんじゃないかって不安だ。
タミヤくんの小さくしゃくりあげるような声を聞きながら、僕は何度も「大丈夫、大丈夫」を繰り返すことしかできない。


永遠なんてないことは知ってる
2013.0105

アンセルのみはらさまからのリクエストで同棲タミカネでした。

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