携帯が小刻みに震え、メールの受信を知らせる。誰だ、こんな時間に。時計を見ると23時を少し過ぎたくらい。携帯のディスプレイには「荒井」と表示されている。めずらしいと思いながらメールのボタンをクリックした。
『今から会えませんか』
それだけだった。荒井の性格上、顔文字や絵文字は使うはずなんてないがあまりにもそっけない文章に思わず笑ってしまう。
「おう、いいぜ」
こちらも同じように一文だけの返事を返す。また携帯が小刻みに震え、ディスプレイには「荒井」の文字。
『では、10分後に学校の前で』


待ち合わせ場所にもう荒井は来ていた。
「悪いな、待たせたか?」
「いえ、少し早く着きすぎてしまったので」
「で、なんかあったのか」
「いえ、なにかったわけではないんですが…」
荒井は言いにくそうに視線を落とすと「ええと、今日は大晦日、です」と小さな声で言った。
「…愛する人、つまり新堂さん。あなたです。あなたと一緒に年越しをしたかった、というのはただのわがままになってしまいますか?」
「お、おまっ!きゅ、急になに言うんだよっ!」
「顔赤いですよ」
「ったりめーだろうが!」
自分でも顔が赤いのはわかる。全身の熱が顔に集まっているような感覚にすらなる。それなのに荒井は平然と涼しい顔をしている。どんな神経してんだこいつ。
「新堂さんは」
「あ?」
「いやでしたか?」
「あ!?な、んだよそれ…い、やなわけねーだろ!だったら来ねえっつーの」
「そうですか、それならよかった」



どこからか除夜の鐘の音が聞こえる。
「新堂さん、あけましておめでとうございます」
「おう、あけましておめでとう」
「今年も僕の愛しい人でいてくださいね」
「おっ、お前なあ…!」

来年も愛しい人へ
2013.0101


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