01


ぽかぽかとした春。鮮やかな青色の空が真っ白な雲とともにどこまでも広がって街を包みこみ、まわりを見ればあちこちで桜がひらひらと舞っている。
毎日学校に着ている制服も二年もすればすこしくたびれた様子。初めて袖を通したころにくらべて、制服姿の自分にも馴染んできた。もう中学三年生かあ、なんて他人事のように。


多くの人が特異体質である、今の世界。それら"個性"を悪用するヴィランから人々を守るために、ヒーローという職業がうまれた。
同じクラスの人たちはほとんどがヒーロー志望で、それは私も同じだった。目指しているのは最も人気で最も難しいと言われているあの有名な雄英高校ヒーロー科。
もうあと一年しかないんだと改めて実感すると同時に不安にもなる。私がヒーローというかっこいい存在に近付くことはできるのかなって。


私には幼馴染がふたりいる。家が近所のために子供のころから一緒にいることが多かった。そんなふたりに、私もヒーローになりたいと言ったことがある。ふたりとも言われた瞬間はすごくびっくりして、子供らしい大きくてまんまるな目をぱちぱちさせていたっけ。

「音葉ちゃんならなれるよ!」
「ビビりのおまえにはなれねえよ!」

そんな正反対の返事ももらった。なれるかはわからない、でもなれたらすごい。街で起こっている争い事は見かけるたびにすごく怖くなる。だからこそ、それらを助けにくるヒーローという存在が眩しくて憧れた。

自分の持っている個性を活かしてあんなふうに誰かの助けになれたらいいな。
すこしでも笑ってくれる人たちが増えたらいいな。

きっかけはそんな漠然とした気持ちだったけど、大きくなるにつれてその気持ちに現実味が現れはじめる。雄英高校の試験を受けにいきたい。それがヒーローの道に進むための第一歩なんだ。


明日の匂いのする方へ

BACK

- ナノ -