捧げ物 | ナノ


▽ オーバーヒート


「こーたぁ!」

「…………!!(ブシャァァ)」


私は教室に戻り康太の姿を見つけると背後から抱きついた。
反応はいつも通り。鼻血を噴き出している。


「ぎゅーっ!」

「…………こ、殺す気か…っ!(ブシャァァ)」


殺す気はないけど私は腕に力を入れて康太に抱きつき、康太は微妙に私の方に顔を向けた。後ろからでも頬が赤いのが分かる。こんな反応が面白いから私はいつも康太に抱きついている。


「……如月の奴。またやっているな」

「毎回毎回、楽しそうな奴じゃのう」

「ムッツリーニが羨ましいよ」


Fクラス男性陣がそんな会話をするのもいつものこと。吉井は羨ましいと言っているが、残念ながら私は吉井に抱きつく予定はない。今後も。何故なら瑞希と美波の反応が怖いから。
あ、女の子には抱きつくよ?……言うタイミング違うか。


「……康太は私のこと好き?」

「…………なっ…!」


ストレートに聞いても答えてくれないのは知っている。これもいつものこと。
多分、康太は自分のことをからかっていると思っている。私はいつも本気なんだけどな。


「……ねぇ、こーたぁー」

「…………(ブシャァァ)」

「おい、如月。もうその辺にしてやれ」


致死量の鼻血を出したと坂本に判断されて、私は彼の手によって康太から剥がされた。


「いーやーだぁー!」


が、勿論私はダダをこねる。


「イヤじゃない。お前はムッツリーニにトドメを刺す気か?」

「…………うぅ…」

「どうせならそこに居る明久にしておけ。羨ましがってたしな」

「「へ?」」


思わず私と吉井の言葉がハモり、同時に吉井はハッと表情が一変した。


「アキー?どういうことかしら?」

「明久君。お話があります」


何処からかともなく現れた美波と瑞希。彼女らは吉井のこととなると正気でなくなる。


「ちょっと待ってよ!?僕は別に―…」

「話は向こうでたっぷり聞くわ…!」

「ってちょっとぉぉおお!?」


吉井の右手は美波、左手は瑞希が持ち、ズルズルとFクラスの教室から出て行った。
ごめんよ吉井。とんだとばっちりだね。
でも怨むなら私じゃなくて坂本にしてね。私は別に吉井に抱きつくなんて言ってないから。


「……浮気、許さない」

「って翔子!?」


今度は霧島さんの登場。なにをどう浮気と判断したか分からないが―…


「……椿に触った」

「触ったらいけないのか!?」


なるほど。私に触ったのがいけなかったらしい。

そして、坂本も吉井同様に教室の外へと連れて行かれた。
Fクラスってやっぱりこうでないとね。
ま、とりあえず、だ。


「んじゃ、気を取り直して、」

「また抱きつくのか!?」


すごい勢いで秀吉に突っ込まれた。


「え、駄目なの?」

「……見るからにムッツリーニは瀕死状態なのじゃが」


効果音をつけるなら"ちーん"だろうな、コレは。


「でも、康太なら大丈夫!」

「……何を根拠に言うんじゃお主は…」

「うーん…」


確かに。そう言われると悩むな。
私は少し考え込み、ピンッとひらめいた。


「そうだ!背後が駄目なら前から―…」

「もっと駄目じゃろ!?」

「えぇー」

「…………(ボタボタ)」


康太は私と正面から抱き合ったのを想像したのだろうか。むくりと起きあがったのは良いものの、再び鼻血を出し始めた。
やっぱり私が女の子だからそんな反応をするの?それとも少しでも私のことを意識してくれてるから?


「……ねぇ、康太?」

「…………なに」

「康太は私のこと、きらい?」

「…………っ!」


沸騰したかのように康太の顔は赤くなった。その反応は期待してもいいのかな?


「私、正面から康太に抱きつきたい」

「…………!!(ブシャァァ)」

「………結局そうなるんじゃのう…」


正直に自分の気持ちを伝えると、康太は鼻血を出し、秀吉は呆れた。


「だめ?」

「…………だめ、じゃない」

「ホントに!?」

「…………椿、なら」


私なら、なんて……嬉しい。流石の私も照れる。私は少し頬を染め喜んで康太に抱きついた。が、


「…………!!(ブシャァァ)」


やぱりいつも通りの反応でした。





オーバーヒート
…………身体が熱い





++++++++++++++++++++++++++
後書き

椋様からのキリリクを書かせて頂きました。二度目ですね!
内容は照れ屋な康太君と言うことでした。
前は甘い内容を書かせて頂いたので今回は、ほのぼので!と思ったのですが…
何処かで間違ってギャグになったみたいです←
ある意味照れ屋な康太君です(苦笑)

こんなもので良ければ椋様のみお持ち帰りOKです。
リクエストありがとうございました!
(2011.11.19)
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