捧げ物 | ナノ


▽ 手をつなごう


授業も終わり、私は康太と一緒に下校している。


「…寒いなぁ…」


昼間は温かいのに下校時間ともなるとすっかりと寒くなっている。はぁっと息を吐いてみると白い息が出ているくらいだ。


「…………(スッ)」


私の"寒いな発言"に反応してからだろう。康太はスッと手を出したが…なんだこの手は。
私は状況が掴めなくて首をかしげる。


「…………寒いなら手を繋ごう」


そういうことで手を差し出したらしい。が、康太の説明は更に私の頭を悩ませた。
普通、高校生の男女が手を繋ぐといったら"恋人同士"ってことじゃないの?もしくは、好きな人同士とかさ。この状況がおかしいと思うのは私だけか?そうなのか?


「…………どうした」

「それはこっちのセリフだ」

「…………?」


何故首を傾げる。


「一応聞こう。私と康太って何?」

「…………幼馴染」

「それだったらこの状況はおかしいと思う」

「…………でも、昔は良く繋いだ」


昔って一体いつの話をしているんだ。それって確実に幼稚園のぐらいの時の話だよね?あのときは何も考えてないから平気で繋げたけど、今は無理でしょう!?さ、流石に恥ずかしいんだけど。


「む、昔は昔。い、今は今よ!」

「…………良く分からない」


男と女の感じ方って違うのか?思春期ならそんな大差ないと思っていたんだけど、それは私だけ?
康太は私が手を繋がないと分かると、自分から手を繋ぎ始めた。ってちょ、ちょっと!?


「な、何でそんなに平気で…」


手を繋げるの、と続けようとしたが続かなかった。康太の顔を見たら私と同じで頬を染めていた。……恥ずかしいのなら何で手を繋ごうだなんて言い出すんだろう。


「…………椿の手、あったかい」

「………康太も、ね」


お互い先ほどまで続いていた会話は続かなくなった。それはそうだ。普通に手を繋いだらそうなるでしょう。
あぁ、でも…先ほどまで寒かったけど今はあったかい、いや、熱いな。


「…………繋ぎ方、変える」

「…は?」


スッと手を離すと康太は手の繋ぎ方を"恋人繋ぎ"に変えた。ってちょっと待てぇぇぇえい!?
私は慌てて手を離した。


「…………どうした」

「どうした、じゃないよ!?流石にこ、これは…!」

「…………俺とじゃ、イヤ?」

「…そ、そんなことは…」


ない、と言えば良かったのに、私は昔っから素直じゃない。中途半端なところで言葉が途切れてしまった。
でも、それは康太もよく分かっているようでニヤリと笑った。……その"何でも分かっている笑い"が私は気に食わない。


「…………そんなことは?」

「………っ」


分かっているクセにわざわざ聞く康太。昔っからこうだ。…絶対に反応を楽しんでいるだろうコイツは。
私は恥ずかしいので少しずつ彼と距離を取ると―…


キキィィ―ッ…


自転車とぶつかりそうになった。私はぶつかりそうになったことよりも自転車のブレーキ音、そして―…


「…………フラフラ歩くと危ない」


康太に驚いた。
何がどうなったのか良く分からないが、私は康太の胸の中にいる。ただ手を引けば良いだけなのにどうしてこうなるの。


「む、むしろ…康太の方が危ないんじゃないの?」

「…………何故」

「は、鼻血とか…」


普通に考えたらこの状況はかなりマズイだろう。
一応、私たちは幼馴染という関係だが、康太は女の子、というか性?に対してはウブだ。妄想だけで鼻血を出してしまう程の。


「…………問題ない」


珍しく男らしく見える。これは、私の身を案じてからなのか、それとも私のことを異性としてみてないからなのか良く分からない。
聞いたら聞いたで"どっちだと思う?"と聞いてくるに違いない。何度も言うようだが、康太は昔っからそんな奴。
―…私は、そんな康太が好きだけど。


「…………顔が赤い」

「誰のせいだ、誰の」


好きな人とこんなシチュエーションになったら誰でも赤くはなる。ドンッと康太の胸を押して離れようとしても、何故か康太が離してくれなかった。小柄で細身でもやっぱり男の力には勝てない。


「何で離してくれないの」

「…………顔が赤いから」

「だから―…」

「…………こうしていた方があったかい」


あぁもうっ!
自分でも身体か火照っていくのが分かる。


「あ、あったかいのは分かった!でも、抱き合うのは好きな人同士が―…」

「…………俺は、椿のこと好き」

「―――!?」


本当にコイツの思考が読めない。てか、何で恥ずかしいセリフをサラッと言えるんだ。


「…………椿は?」

「……わ、分かってるでしょ?」

「…………分からない」

「嘘つけ!」



でも、こんな風に笑いあえる康太との関係が―…
私は好きです。





手をつなごう

…………好きだから、からかいたくなる





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後書き

チョコ様からのリクエストを書かせて頂きました。
甘い奴で「私とメイド服とお泊り」みたいなので、キュンキュンさせられたり照れさせたり、という内容でした。
ところどころ無理矢理感もある気がしますが…(汗)

こんなものでよければチョコ様のみお持ち帰り可能です。
リクエストありがとうございました!
(2011.11.13)
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