短編(銀オフ) | ナノ


▽ 竜持君に見透かされる


「あれ、竜持君。今帰り?」

「ええ」

土手を歩いていると見覚えのある姿―…おかっぱが見えたので声をかけてみた。
私に声をかけられた竜持君は振り返るとにっこり笑った。
肩からスポーツバッグをさげているところを見ると、サッカーの練習の帰りだろう。

「虎太君と凰壮君は?」

いつも一緒に居る2人の姿がなくて周りを見てみるが何処にもいない。
不思議なこともあるんだなあ、と思っていると、

「あそこで練習しています」

と、竜持君は土手の下を指した。
ああ、なるほど、と頷く。
サッカークラブの練習が終わった後なのに体力あり余っているなんて凄いなあ。

「竜持君は良いの?」

「はい。今は上から2人の様子を観察しているところです」

「へえ」

一見、いつもと変わったところは特にないのだけれど、良く見ると(良く見るまでもないけど)、竜持君はプレゼント3つ持っていた。
ラッピングが可愛いところを見ると流石に男の子から貰ったってワケではなさそう。
…竜持君は性格に難ありだけれど、黙っていればカッコイイしなあ。サッカーしている姿なんかもっとカッコいいし。

「詩織さん?どうかしましたか?」

ちょっと嫉妬しちゃうかも、なんて考えていると竜持君に顔を覗かれた。

「わわわっ…!?」

勿論、私は竜持君に顔を覗かれると思わなかったので、思わず距離を取った。

「ぷふっ…面白い顔ですね〜」

「う、うるさいっ!」

肩を小刻みに震えているところを見るとますます腹が立ってくる。
何処が面白いんだ。てか、いきなり顔を覗き込む竜持君が悪いんだ。

「…それ、どうしたの」

「え?これですか?」

私が竜持君に笑われた元凶でもあるプレゼントを指すと、竜持君は少し持ち上げた。

「翔君からいただきました」

「お、男からぁ!?」

「…相変わらず面白い反応をしますね」

「面白くさせているのは何処の誰ですか」

男から貰った、なんて聞くとそりゃあ驚くに決まっている。
私じゃなくても大声を出すよ。

「翔君のクラスの女の子からですよ」

「…女の子から、3つも…?」

今の私には「ずーん」って言葉がお似合いだろう。
…私の学校でも竜持君たちはモテるからなあ。
実際に行動に移す子はあまりいないけれど(性格を知って居るから)、他校の子は性格を知らないから積極的に行動するなあ。

「ぷふ…」

落ち込んでいると竜持君はまた笑った。

「べ、別に落ち込んで居ないから!」

竜持君は私が落ち込んでいると思ったのか、いや、実際に落ち込んでいたけれど、自分の気持ちを見透かされていたのがイヤで嘘を吐いた。
けど、それがまた逆効果だったのだろうか。
竜持君は笑い続けていた。

「もしかして、ヤキモチ焼いているんですか?」

「だっ、誰がっ!」

「そうやってムキになると、余計に "私はヤキモチ焼いています" って言っているようなもんですよ」

「…っ!」

何もかもがお見通し、というところが腹が立つ。
私が分かりやすいから、というものもあるけど、竜持君の表情がまた私の感情をかき立てる。

「詩織さんって可愛らしいところもあるんですね。知って居ましたけど」

「絶対にバカにしているでしょ!」

「おやおや、僕の気持ちが分からないんですか?」

「分かるかっ!」

「そんなに怒らないでくださいよ。これでも、僕は詩織さんのことが好きですよ」

「だから…!」

今までのやり取りを見て何処をどう見たら竜持君が私のことが好きだなんて思うだろうか。いや、誰も思わない。
絶対に私をからかっているに決まっている。
だから、そういうの止めてほしい。
そう言おうとしたけれど、竜持君―…の唇で口を塞がれてしまって言葉を続けることができなかった。

「〜〜〜〜!?」

驚いた私はこれでもか、というぐらいに目を見開いた。

「キスするときは目を閉じるのが礼儀ですよ?」

「ななななな…!」

礼儀うんぬんの以前の問題である。
こいつは外で、しかもこんな土手でなんてことをしているんだ。

「―…これでも、信じられませんか?」

ニヤリ顔が私の瞳に映る。
もう、彼以外は視界に入らない気がした。

『…つーか、俺らの存在忘れてねぇ?こっから丸見えなんだけど』

『…見てるこっちが恥ずかしい』



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後書き

銀オフの竜持君夢。
こんなカッコイイ小学生みたことない。

(2013.02.03)
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