契約彼氏(銀オフ) | ナノ


▽ 1日目

『知里子と竜持の奴。どうしたんだ?』

『付き合っているんだとよ』

『へー…はぁ!?』

契約彼氏1日目の朝。
いつもなら降矢兄弟は横に並んで登校しているのに、今日は違っていた。
虎太君と凰壮君だけ横に並んでいて、彼らの少し前に私と竜持君が並んで歩いている。
私もたまに彼らと一緒に登校することもあったけれど、今みたいに竜持君の隣にずっといることはなかった。…まあ、仮に付き合っている、から仕方がないんだけどね。
そんな光景を不思議に思った凰壮君は虎太君に訊ねると虎太君はサラっと言った。

「…なんで虎太君はサラっと言うんでしょうね」

「虎太君だからねえ…凰壮君みたいな反応が普通なんだけど」

私と竜持君は後ろから聞こえてくる彼らの会話に呑気にそう言った。
虎太君は恋愛とかにあまり興味なさそうだしね。

「お、前ら!どうしてそうなった!」

「むしろ凰壮君がそんなに慌てるなんて珍しいですね」

「その元凶はどこのどいつらだ」

「僕たち、でしょうかね」

他人事のように言う竜持君だけど、思いっきり関係しているからね。

「事情を説明しなくてごめんね。色々とあって…ごにょごにょ」

私は凰壮君の耳元で事情を説明するとまた大きな声を上げた。

「だからって…お前らなぁ…」

「僕だってノリ気じゃなかったんですよ。知里子さんにあそこまで言われてしまったら断れなくて…」

「はぁ…」

「ま、"貸しはデカイ"と言っておきましたので、僕はそれに期待します」

「えっ、何かしないと駄目なの?」

「当たり前でしょう!でないとこんな面倒なこと誰が…」

「なっ…!」

竜持君の言う通り、こんな面倒なことを無償で引き受けるわけがない。
宿題見せて、のレベルならまだしもね。

「さーて、何をしてもらいましょうかね」

「お金のかからないものにしてよね…!」

「ふふふ」

「あ、ちょっと…!」

竜持君は意味深に笑うと先に行ってしまった。
もー、お願いだから本当にお金のかからないものにしてよ。
あと、出来るなら面倒じゃないものにしてほしい。…これはワガママかな。

『…どうして竜持なんだ。ったく…』

『…羨ましいのか?』

『べ、別に…』

『ふーん』

『何か言いたそうだな虎太』

『別に』

* * *

放課後。
予想はしていたけれど、告白してきた男の子に呼び出された。
…まあ、今日1日は竜持君と一緒に行動していたことが多かったからイヤでも知るだろうけど。

「あの…話って何かな?」

「お前、降矢竜持と付き合っているって本当か?」

「…うん」

昨日言ったじゃないの。付き合っている人が居るって。
…まあ、付き合っている人ってのがまさかあの"降矢"だとは誰も思わないだろうけど。
だって、彼らは性格に難ありで仲がいい人なんて誰も居ないのだから。
…しいていうのであれば、私ぐらい。仲がいいと言えるかどうか分からないけど。

「話ってそれだけ?だったら私、そろそろ帰るね」

男の子は何も言ってこなかったので私はそう言った。
…付き合う気もないし、竜持君と付き合っているってことになっているんだらか、諦めてくれないかな。

「…なんでアイツなんだ」

「え?」

「他の奴だったら諦めようと思った。けど、降矢兄弟は認めない」

認めない、と言われましても。
一応、付き合っているってことになっているんだし、それに私はキミと付き合う気まったくないのだから。
…そう言いたくても言えるはずがない。

「俺の何処が悪い?何が足りない?」

「え、ちょっと…!」

じり、じり、と一歩ずつ近づいて来て、私は一歩、また一歩と下がった。
そんなに迫って来られても私、困るよ。

(どうしよう…)

校舎の裏に呼び出されたため、助けは来そうにないし。
こんな時に竜持君助けに来てくれないかな…。流石にそんなにうまくいかないか。

「…何しているんですか?」

そう思っていたら、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
竜持君だ。

「降矢竜持…!」

「おやぁ?何勝手に知里子さんと2人きりになっているんですか」

竜持君はそう言うと手に持っていたサッカーボールを手離した。
ニヤリ、と笑みを浮かべたかと思うと、竜持君はサッカーボールが地面につく前に思いっきり蹴った。
竜持君が蹴ったサッカーボールは丁度男の子の顔1つ分横へと通り過ぎた。

「僕の好きな子に手を出さないでもらえます?」

「…ちっ」

竜持君のボールにびびったのか、それとも、居づらくなったのか、はたまた両方か私にはよく分からないけれど、男の子は舌打ちをすると何処かへ逃げて行った。

「……」

ドキドキと煩いぐらい胸が鳴っている。
これは、竜持君の鋭いボールが飛んできてビックリしたから。
きっとそうに違いない。

「大丈夫ですか?貴女も気を付けないと駄目ですよ」

「どうして助けてくれたの…?」

「その質問は愚問ですね。付き合っているんですから当たり前でしょう」

ドキリ、と心臓が跳ねた。
竜持君がそんなことを言ったのもあるけれど、笑顔つきで言うなんて聞いてないよ。


この恋は止められない
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