▽ 勘違い伊月君
キーンコーンカーンコーン。
HRが終わり福音が鳴り響く。それと同時に俺は荷物を手に取り教室を出た。勿論向かう先はバスケ部の部室。
多分、俺が一番乗り。他の奴は掃除当番とかがあったはずだし。
(…ん、誰かいる?)
部室の戸に手をかけようとすると、中から人の気配を感じ思わず手を止める。
おかしいな。2年の奴らは皆遅れてくるって聞いていたんだけど。あ、1年生は知らんわ。
『水戸部…』
この声は…凛?
あー、そういえば彼女は直ぐに行けるって言っていたっけ。ってちょっと待て。今、水戸部って言わなかったか?つまり、水戸部と二人っきり?てか、なんかいつもの凛の声と少し違うぞ。なんていうか、こう…女っぽい?いや、違うな。何だろ。
『あ、そこ…』
え、そこ?何処だよ。ちょ、ちょっと待て。え、え?あいつらってそういう関係だったの?
いや、まだ断定するのはまだ早い。だか、他に判断するにはどうすればいいんだ?水戸部の奴は喋らないから凛が喋る言葉からの情報しか得ることができないし。
「……」
そもそもよく考えてもみろ俺。凛は水戸部のことを名字で呼んで、俺のことは下の名前で呼んでくれる。だったら付き合っているなんてのは安直な考えじゃないのか。…そんなことはないな。もしかしたら、付き合っているのを隠すためにわざと名字で呼んでいるっていう可能性もありうる。
『もうちょっと左お願い…』
…付き合う付き合わないに関しての名前の呼び方なんて大事じゃない。大事じゃないことは分かっているけど。
凛は水戸部のことが好きなのか…?って、なんかこれじゃあ俺が嫉妬しているみたいじゃないか。
おおお落ち着け俺。あの凛と水戸部だぞ?そもそも水戸部が凛に手を出すなんて考えられない。あははは…。
…いや、ありえるな。水戸部はおとなしいが奴はあれでも男だ。やるときはやるかもしれない。
考えれば考える程不安になってくる。手遅れになる前に早く止めないと…!
「な、なにやってんだ…!」
「へ?」
バン、と戸を開くとそこには変な声をあげた凛と彼女の後ろに水戸部。
二人は目を丸くしてパチクリと何度も瞬きをしてる。まるで俺が何で叫んだのか分からないと言っているかのように。
「あ、あれ…これは…?」
二人がそう思うのも無理はない。
凛は水戸部に肩を揉んでもらっていただけだったのだ。
「いやー、すっかり肩が凝っちゃってねえ。水戸部にほぐして貰っていたのよ」
「……(コクリ)」
「てか、俊…顔が赤いけどどうしたの?」
「……何でもねーよ」
部室で二人でイチャついていると思って焦った、なんて口が裂けても言えるわけがない。
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後書き
勘違いネタ大好きです。おいしいです(^q^)
(2012.06.19)
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