▽ ミツオ君の筋肉
「ねえ、思ったんだけどさ」
「なんだよ」
「ミツオ君ってラグビー部なんだよね?」
「ああ」
「筋肉ってあんの?」
「…は?」
読んでいた雑誌を閉じて真顔で見てくる。
…どうして急に筋肉の話になるんだ。
「いや、"は?"じゃなくて。筋肉だよ、筋肉。ニンニクじゃないよ」
「わーってるよ!つーかニンニクって何だよ!?」
「え、ミツオ君。ニンニク知らないの?」
「可哀想な目で見るなよ!知ってるから!」
「ああ、そう…」
「何?その"いいのよ。誰でも知らないことの一つや二つはあるから"的な目は。つーか筋肉!なんでいきなり筋肉の話になんだよ」
「え、いや。ふと思ったけど、運動部の人って筋肉あるけどミツオ君は無さそうだなあって」
「酷ぇ」
「だってミツオ君ヘタレだし」
「ヘタレと筋肉は関係なくね!?」
昔からだけど凛と会話していると必ずって言って良いほどツッコむ要素がふんだんに盛り込まれている。これはワザとなのか意図的にやっているのかは分からないが。…多分ワザとだな、コイツの場合。無駄に俺より頭良いし。
「無駄にとか言うなよミツオ君のクセに」
「何で心の声が聞こえてんだ怖ぇよ!」
「私に不可能という文字はない!」
「どんだけ無敵なんだよお前は」
「まあ、そんなのはいいのよ。筋肉よ筋肉」
さっきから自分で話を逸らしているくせに…おっと。こんなことを思うとまた凛に何か言われるから何も考えないようにしなければ。
「ミツオ君は筋肉あるの?ないの?」
「そりゃあ、ラグビー部だからそれなりには…」
「触らせろ」
「触ら…え?」
何言ってんだコイツ?と思って目を向けると凛の真面目な顔がもうそこにあった。てか、ちけーよ!
「なに勝手にスソまくってんだよ!?」
「なんだ、腹筋割れてんじゃないの。ミツオ君のクセに」
「人の話を聞けよ!」
「え?スソまくらないと腹筋割れているかどうか分からないじゃないの」
…いや、まあ。確かにそうだけどさ。
だからと言って本人の承諾なしにまくるってのはマナー違反だというかなんというか。
「いいじゃないの。私とミツオ君の仲なんだし」
「他人が見ると色々と誤解を招くだろうが」
「誤解…?あ、ミツオ君が私を襲っているって?」
「逆だよ逆!」
どう見ても俺が凛を襲っているようには見えねーよ!そんな度胸もないし。…言ってて悲しくなってきた。
凛は俺の言うことを気にしない、と言ったように俺の腹筋に手を伸ばした。
「固い…」
「…そりゃ一応鍛えているからな」
「わぁ…すごい」
「……」
好奇な目で俺の腹筋を触っては楽しそうにしている凛。そんな顔を見せられたら今まで騒いでいた自分がバカらしくなってくるじゃないか。
…喜んでくれるなら何度でも触らしてやるよ。
「ん、黙ってどうしたのミツオ君?」
「なんでもねーよ」
「変なミツオ君」
ねえねえ、今度は力こぶ出してよ!とキラキラした目で見てきたので、俺は「…仕方ないな」とまるで兄が妹の要望を叶えてやるかのように笑った。
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後書き
何処に向かっているのかまるで分からなかった。
とりあえず筋肉ネタを書きたいと思ってガタガタガタとキーボードを殴っていたらこんなことになった。
しっかし、ミツオ君は筋肉なさそうだよね←
(2012.07.09)
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