5万hit企画 | ナノ


▽ 二度あることは三度ある?


「春休みなのに生徒会室の電気がついている…」


私は家に居ても暇だから北高生徒会室に足を運ばせていた。勿論、制服を着て。
正直、春休みだから北高生徒会メンバーは居ないだろうな、なんて思ってもいたが、今日は運良くいたみたい。無駄足にならなくて良かった。


「失礼しますー!」


ガチャリ、といつものように生徒会室の扉を開けるとそこにはモトハル、唐沢さんの二人だけが居た。
意外。人がいるなら四人みんな居るものだと思っていたけど。


「二人だけですか?」

「いや、全員来ている。副会長はトイレに行っていて会長は知らん」

「そうですか」


と、私は空いた席に腰を落ち着かせた。
なんだ、皆居るんじゃないの。金髪は行方不明みたいだけど。まあ、金髪は別に興味ないや。会おうと思えばいつでも会うこと出来るし。…会おうと思わないけど。


「春休みなのに大変ですね」

「そうでもない」

「え、じゃあどうして来ているんですか?」


見るからに資料を仕分けているのに唐沢さんは大変じゃないと言った。どういうことだ。大変じゃないのなら私みたいに何もしないだろうに。…それも問題あるか。
手元の資料を整理している唐沢さんの代わりにモトハルが口を開いた。


「暇なんだよ。俺らも」

「だから、生徒会室に集まって資料の整理をしようかと思って」

「ああ、なるほど」


なんだ、私と一緒で皆さん暇なんだ。
…まあ、来て何かしようとしているところは私とは違うけど。私なんて、遊ぶ気満々だったからね。
そういえば、と唐沢さん。


「さっき、りんごちゃんさんが来ていた」

「え?生徒会長が?」


こっちは意外だ。何で北高の生徒会室にお邪魔しているんだろ?


「まだその辺をうろついていると思う」


うろついているって、不審者じゃないんですからと私は笑う。…まあ、ある意味不審者かもしれないが。以前、北高生徒会室にお邪魔しては唐沢さんは殴るは金髪は殴るわだったし。…あの時はお騒がせしました。大変申し訳ないです。
心の中で謝罪を入れていると、カチャリ、とドアが開いた。


「あ、副会長。お邪魔してます」

「立花さん。いらっしゃい」


と、北高生徒会副会長。手にハンカチを持っているところを見るとトイレから戻ってきたようだった。


「今すぐ紅茶淹れますね」

「あ、いえ。お構いなく」

「そうはいきません。折角来て下さったのですから」

「えと、じゃあ…お願いします」


私は副会長の心遣いに負けてしまい、頭を下げた。
いやあ、副会長の紳士っぷりには脱帽します。金髪も見習ってほしいものだ。うんうん。
副会長は手際よく紅茶を淹れてくれて私の前に出してくれた。


「熱いのでお気を付け下さい」

「ありがとうございます」


カップに口をつけ、ゆっくりと傾ける。
ああ、ここの紅茶ってやっぱ美味しいな。なんて思いながら味を楽しんだ。
私だけ呑気に紅茶を飲んでいるが、他の三人は相変わらず資料に目をやっている。


「…って、私だけこんなにくつろいでいて申し訳ないです」

「いや、良いんですよ。立花さんはゆっくりして下さい」

「むしろ俺らはあんまり構ってやれないが」

「それは全然気にしないでください」


って、私ってば何やってんだろ。
北高生徒会は春休みに生徒会室に来て、資料の整理をしているのに私はそれを邪魔をしている。なのに、彼らはそんな私に気を遣ってくれてて何だか申し訳ない。…彼らの仕事が終わるまでおとなしくしておこう。

バタンッ―…

勢いよく生徒会室の扉が開き、そこには見知った女の子の姿があった。


「せ、生徒会長…。そんなに慌ててどうされたんですか?」


血相を変えて、ゼェゼェと息を切らしている。てか、顔怖いよ。


「月乃…アンタ…」

「何でしょうか…?」


そして訊ねられた。


「男だったのね…!」

「は…?」


何を言っているんだこの女は。
私が男、だと?それは何の冗談だ。女子校通っているけど実は男ですとか漫画の読み過ぎでしょ。


「いや、確かに前からおかしいなって思っていたのよねー。月乃ってば、妙に落ち着いているっていうか」

「え、いや…え?」

「いいのよ。あたしは別に気にしてないから」

「気にしろよ!」


つーか、と私は声を上げる。


「どうして私が男だ、っていう話になっているんですか」

「アホの生徒会長が月乃の事を"ああ見えて立花さんって男らしいですぜ?"って」

「……」


あんのクソ金髪…!
後で会ったら血祭りにしてくれるわ…!
何で金髪は私のことを男って…って、ああ、そうか。なんでそんなデタラメを言うか分かったぞ。
はあ、と私はため息を吐いた。


「生徒会長、落ち着いて聞いて下さいね」

「大丈夫よ。私、何聞いても驚かないから」

「…今日、何の日か知って居ますか?」

「今日?今日は―…」


と、生徒会室にあったカレンダーに目を向ける生徒会長。


「4月1日ね。…あ」

「そういうことです」


今日は4月1日。エイプリルフール。
この日は嘘をついても良いとされていて、金髪はその行事に乗っかって生徒会長に嘘を吐いたのだ。
…私が男だなんて見え透いた嘘を。どうせならもっとマシな嘘をつけばいいものを。


「あいつ…!」


生徒会長は拳をフルフルと握り締めると生徒会室を飛び出して行き、そのお陰で生徒会室は一気に静かになった。…嵐のようだったなあ…。


「…生徒会長殴られるな」

「そうですね」


唐沢さんが言った言葉に呑気に返す私。
いや、もうこの際、ボッコボコに殴られればいいと思う。
私を男扱いした罰だ。
そういえば、と私は口を開いた。


「皆さんは嘘つきました?」


今日はエイプリルフール。
私はまだ嘘を吐いていないが、皆さんが嘘を吐いたのならどんな嘘を吐いたのか気になるところ。


「ついたな」


と、モトハルだけが反応した。あとの二人が反応していないところをみると、嘘をついていないんだろうな。
どんな嘘をついたんだろう、と思って訊ねてみる。


「"風邪はキスして移した方が治りが早い"って」

「……え?」


私は少し間をおいて聞き返した。
待って。え…?


「いや、俺のダチが"幼馴染が風邪引いた"って話をしてよ」

「へえ、それで?」

「いやいや、それで?じゃないですよ!」


モトハルの言ったことに対して何の問題もない、と言ったように唐沢さんは言った。
え、私がおかしい?と、と思って副会長の方を見てみるが、彼も唐沢さんと同じだった。
…私がおかしいのか?いやいや、そんなことはない。


「おかしいでしょ!?確かに人に移した方が治るって言うけどさ!」

「そうか?」

「特におかしくはないが」

「ああ」

「私がおかしいのかそうなのか!?」


なんだ此処は!?四面楚歌か!
と、思っていると再び生徒会室の扉が勢いよく開かれた。視線をそっちの方へと移してみると、生徒会長が息を切らして立っていた。あれ、これデジャヴ?


「月乃。聞いたよ!あんた…女の子が好きなんだってね」

「なんで二度も騙されてんだぁぁあ!」


どうしてそうなる!?
そして金髪は私をそうやっていじるのが好きなのか!?
生徒会長は「また騙された!」と言ってどっかへ行った。


「立花さん、女が好きだったんですね」

嘘だと言っているのに資料を整理しながら副会長は聞いてきた。


「いや、違いますからね?今日エイプリルフールですからね?」

「どんなのがタイプなんだ」

「唐沢さんも乗らないでくださいよ」

「俺は姉ちゃんみたいな奴じゃなければいいかな」

「誰もモトハルの好みは聞いてねぇぇえ!」


ゼェハァ言いながら私はツッコミを入れた。
…あれ、私、何しにここに来たんだろ。


「じゃあ、男だと?」

「え?」

「まあ、それでも良いかな」

「いや、何が?」


乗るな、と私が言ったからか、珍しく副会長がそう訊ねて来たと思うと、モトハルが、それでも良いかな、とか言い出した。何がだよ。
つーか、普通、女子に聞くとしたら女子の好みよりも男子の好みを聞くでしょうが。
……私、何言ってんだろ。

バタンッ―…

今日で何度目だ、と思われる生徒会室の扉が乱暴に開かれた。
まあ、もう、これは見なくても生徒会長だろうな。


「月乃。あのアホの会長といとこなんだって!?」

「…え゛」


声で生徒会長ということが分かったが、今、生徒会長は何て言った?
アホの会長…あの金髪と…いとこ、だと…?
私は思考回路が停止した。
金髪の奴…!なんてことを言ってんだ…!?


「って、まあ、流石に今回は騙されなかったわよ!何せ今日はエイプリルフールだからね」

「……」

「あたしもそんなにバカじゃないよ」

「……」

「月乃?どうしたのよ、その目は」

「いえ、何でもありません」


…生徒会長がバカで良かった、と思った瞬間だった。





二度あることは三度ある?

ちなみにその後、金髪を血祭りにしたのは言うまでもない。





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後書き

50000hit企画第5段。
ミゾレ様からのリクエストで連載番外編のりんごちゃんや生徒会を絡めた馬鹿話という内容でした。
エイプリルフールネタでいこうと考えてはいたのですが、間に合うかどうか不安でした←
ギリ間に合ってよかったです(笑)
ちなみに、夢主が北高生徒会長のいとこっていうことを知っているのは相変わらずモトハルだけです。

あと、キスの話は時間軸は違いますが、他の企画夢にも出たあの話です(笑)

ミゾレ様のみお持ち帰りOKです。
リクエストありがとうございました!
(2012.04.01)
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