▽ 第7話
無事、かどうかわからないけど、とりあえず文化祭は終了した。
私たちは全体の片付けが終わり、下校することになった。
「お疲れさん」
そして、当たり前のように私の隣には金髪がいる。
「何で隣に歩いているんだよ」
「歩いちゃいけないのかよ」
「歩くなバレる」
でも、モトハルにはバレたんだよなあ…。
隠そう隠そうって思っていたくせに、独り言でポロポロと言ってしまって。
私って隠し事って出来ないんじゃね?あーあ。
「はあ…」
「ため息吐くと幸せ逃げますぜ」
「誰のせいだ誰の」
「え、俺?」
自分のせいでため息を吐いたと知った金髪は驚いた顔を私に見せた。
何故驚く。
私が最近気にしていることと言えば、こっちの生徒会とそっちの生徒会の人らに私らがいとこっていうことを知られないことでしょうに。
まあ…気にしているのは私だけだけど。金髪は別に私といとこってバレても別に痛くもかゆくも無いみたいだし。
そりゃそうだ。
私は別に問題のある子じゃないからね。金髪よりは。
「モトハルにバレたんだよ…アンタといとこっていうことが」
「モトハルにバレたの?へー」
金髪は、そっかー、モトハルにバレたのかーと繰り返した。
「興味なさそうだね。てか、頬腫れてるね」
よくよくみると金髪の頬は少し赤く腫れていた。
「りんごちゃんに平手打ち食らうわ体育館では乱闘になるわ…もう散々だった」
「平手打ち?一体ウチの会長に何したの」
体育館でガチンコバトルをしたことは知っているが、あの時はウチの生徒会長は金髪に平手打ちをしていなかった筈。
私は探りを入れるように訊ねた。
「何っていうか俺の方が被害者なんだけど…」
「どういうこと?」
「北高生徒会主催のジャンボお化け屋敷でお化けの準備をしていたらさ」
「うん」
「りんごちゃんに着替えを見られた」
「……は」
私は思考回路が停止した。
今、コイツ…なんて言った?き、着替えを…?
いや、待てよ。着替えと言っても上半身裸でも別に平手打ちされるわけないじゃないの。とりあえず理由を聞こうじゃないか。
「いや、だから」
「見られたのは分かった。何で平手打ちされんの?」
「トランクスがちょっと脱げていて…」
「変態」
私は間髪入れずに言った。
コイツ、下を着替えようとしている時を見られたのか!ていうか、なんでトランクスが脱げるんだ!?普通に着替えていて脱げる状況にはならないだろ。それともあれか?お化け役するのにトランクも脱ぐのか?ノーパンなのか?
もうそれは何か意図的なものとしか思えない。
「なんで!?俺被害者なのにっ!」
「生徒会長に下半身を見せる奴に変態と言って何が悪い」
「聞こえが悪過ぎる!つーか、見せてない!これ見よがしに見せてないから俺!」
「誰もそこまで言ってねーよ!!」
やっぱり見せたんじゃねーか!とぎゃあぎゃあ言っているとヒソヒソ話が聞こえてきた。
『あの高校生、見せたとか言っているわよ…』
『やーね。最近の子は…』
「「……」」
私たちは途端に黙った。
く、くそー…!金髪のせいで私まで変な子扱いされたじゃないの…!これじゃぁこの近辺の奥さま方のネタになってしまうじゃないか…!
「せ、責任を取れー!」
「何で俺!?」
『今度は責任を取れとか言っているわ』
『どういうことかしら…?ま、まさか…』
「…頼むから忍はもう喋らないでくれ」
「は?何でよ!」
「(忍は言葉が足りないから誤解を招くんだっつーの!)」
何だか良く分からないけど金髪は深いため息を吐いた。
「そ、そうだ。唐沢と仲良くなったんだって?」
「え、唐沢さん?急にどうして」
「いや、副会長から召集がかかる前にやけに楽しそうに会話していたからさ」
「楽しそうだった?まあ、アンタよりは話していて楽しかったのは確かだけど」
「俺に対する扱い酷いな」
え、酷い?いつものことだと思うけど?
「いやあ、私。ご存じの通り、大のネコ好きでして」
「初めて聞いたぞ」
「唐沢さんのネコ耳を見て食いつくわけっすよ」
「は、はあ…」
「それで、私が唐沢さんの手をにぎにぎして遊んだわけです」
「…はあ!?」
「え、」
ことのあらましを説明していると、途中まで金髪は"はあ…"と力無く言っていたのに、いきなり声のボリュームが上がった。
「デカイ声出さないでよ。びっくりするじゃない」
「びっくりするのはこっちだ!何やってんの!?」
「え、何か問題でもあった?」
私、変なこと言った?
ただ、唐沢さんとのやりとりを説明しただけなんだけど。ネコの手を触ったとか。
「問題大ありだ!なに男の手を握って遊んでいるんだ!?」
「えー?手って言ってもネコの手越しだし、直じゃないよ?」
「直じゃなくてもだ!」
普段はそんなに煩くないのに、金髪の奴…どうしたというんだ。
「なんでそんなに煩く言うわけ?」
「煩くもなるわ!相手が女の子ならまだしも男だぞ!?」
「男男煩いなあ。いうても唐沢さんだよ?そんな心配されるようなことじゃないよ」
「ああもう…先が思いやられる」
金髪は深いため息を吐きながら額を手で覆った。
「金髪にどうしてそんなことを言われなきゃならんのだ。むしろ私のセリフだと思うんだけど」
(まあ、相手が唐沢で良かったと言えば良かったかもしれんな…。これが別の男だったら絶対に惚れられているぞ…。ただでさえ、俺達男子高の奴らは女の子に飢えているというのに…)
「…金髪?」
(って待て待て。どうして俺は忍の心配をするんだ?これっておかしくね?…いや、おかしくないか。いとことして心配だもんな。うん、きっとそう)
「何勝手に頷いてんの。意味分からん気持ち悪い」
「……俺に冷たい言葉浴びさせるの好きだね」
こんな会話をしながら帰宅した。
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