胡蝶の夢 | ナノ


▽ 第2話

翌日の放課後。
私はいつも通りに生徒会室に入るとそこにはもう皆が集まっていて何処かへ行く体勢になっていた。
ああ、そういえば金髪が言ってたっけ。話が行くと思うって。

「忍。遅かったじゃない!」

「すみません生徒会長。って、どうかしたのですか?」

なんだかいつも以上に気合が入っている。
生徒会長は腕組をして、

「今から北高生徒会室に乗り込むよ!」

と、言った。
乗り込む、ということは文化祭の打ち合わせでもするのだろうか。まあ、話合いは早いうちにやっていた方がいいしね。
私は「分かりました」と言おうとしたが止めた。
…待てよ?私は北高の生徒会室に行く理由はあの金髪から聞いているけどそのまま話を進めたら怪しまれないかな?なんで突っ込んで来ないのよ!って。
……いや、生徒会長のことだ。きっとそこまで頭は回らない筈。

「分かりました。何か必要なものはありますか?」

「ない。そのまま行く」

予想通りで生徒会長は何も突っ込んで来なかった。良かった。
てか何処となくピリピリしているけど…なんで機嫌が悪いんだろうか。
疑問に思いながらも私たち生徒会役員は生徒会長に続いて北高へと向かって行った。

「………」

そして、我が東高の生徒会長は正門の所で腰に手を当てて仁王立ちしている。
彼女以外の生徒会役員は近くの木の陰から見守っている。

「か、会長〜…」

「何ビビってんの。行くよ!」

私はビビっていないけど、他の子二人がビビっているためまとめられた。
まあ、女子高なら男子高に行くのはビビるよね。私はあの金髪のお陰でビビらなくても済んでいる。…今のところは。

「でも会長ー…」

「男子高なんて初めてだし…」

私だって初めてだよ。
でも、反応に何でこんなにも差があるんだ。
私、普通じゃないのかな。

「そんなんだから男子にナメられんのよ!」

「ええ〜アタシらナメられてるんですか」


ズカズカと正門をくぐり進んでいく会長。
…なんか勢いで行っているところがあの金髪と一緒だなぁ。
てか別に男子は私ら女子をナメているわけではないと思うんだけど。

「いや、知らんけど」

やっぱ適当なこと言っていた。

「今日は女子高との品位の違いって奴を見せてやるのよ!しょーもない頭からっぽの男子高校生にねっ!」

「品位、ですか…」

「何よ忍。文句でもあるの?」

「いえ、ありません…」

とりあえず暫くは黙っておいた方が無難だろうな。うん。
堂々と歩いて行く生徒会長の後に私らは続いて行く。

「失礼します!」

ノックもせずにドンッとドアを開く生徒会長。
……頼むからノックぐらいはしましょうよ。向こうが着替え中とかだったらどうするんですか。…まあ、運動部じゃないからそんなことはないけど。

「あ?」

確かに着替え中ってわけではなかった。
でも、まだそっちの方が良かったのかもと思った。
目つきの悪い男子3人がこちらを睨んでいたのだった。

「「「「ぎゃぁぁああ!!」」」」

流石の私もコレは驚いて悲鳴を上げ慌てて部屋から出て行く。勿論ドアもちゃんと閉めて。

「ヤンキーの溜まり場と間違えたか!?」

「いや、確かに生徒会室です!」

上に付けられているプレートを見ても"生徒会室"と書いてある。
でも、さっき中に居た人らは金髪だったしオールバックも居たし…。なんか帽子かぶっている人も居たし。本当に生徒会室か?
私たちはもう一度恐る恐る扉を開いてみる。

「す、すご…」

さっきまでトランプをしていたのに手際よく椅子や机を移動させ、机の上に人数分のティーカップを乗せた。隣にはカステラも添えて。

「何モンだテメェら」

金髪の色黒の男子生徒は紅茶を注ぎながら私らに訊ねた。
こ、怖いんだけど…。なんだか怒っているようにも見えるし。

「あ、どうも…」

我が生徒会メンバーの1人が先に椅子に座ろうとすると、オールバックの男子生徒は先に後ろに回って椅子を軽く押した。
な、何だ此処は…!紳士過ぎないか?てか私のいとこの金髪が見当たらないけど…え、ここ、本当に北高の生徒会室か?
私も同じように椅子に座った。

「あ、あの…私たち…真田東女子高の生徒会で…」

さっきまでの勢いはどうしたと言わんばかりに生徒会長はおどおどしている。
……私も椅子に座ったものの落ち着かない。

「おい」

「ひぃいっ」

金髪色黒男子生徒が何か針のようなものを取り出し生徒会長を睨む。
せ、生徒会長がやられる…!
思わずガタッと席を立ったが、

「すみませんが全員入校許可書を着けてもらいませんと」

針の正体は入校許可書の安全ピンだった。
お、驚いたじゃないの…。

「何か?」

私が立ったことに不思議に思った帽子の男子生徒が訊ねた。

「え、あ、すみません。何でもないです…」

ペコっと頭を下げて私は椅子に座った。
よ、良く見ているなぁ…。でも、私が立った理由が会長が殺されるかもしれないだなんて知ったら変な奴だと思われるだろうな。
私たちは渡された入校許可書を左胸に取りつけた。
いやあ、しっかしまあ…生徒会室キレイだなぁ。こっちの生徒会室とはエライ違いだ。一応、気付いたら片付けるようにしているけど、生徒会長があれだから…片っぱしから散らかされるし。
私は目の前にあるティーカップに手を取った。

「ふざけんなっ!」

紅茶を頂こうとしたら会長が怒鳴った。
え、の、飲んだらマズかったのかな…。も、申し訳ない。で、でも、良く見たら皆も紅茶を飲もうとしていたりカステラを食べようとしている。

「誰か!これでもっと良いお菓子を買って来てくれ!」

胸ポケットの中から万札を取り出した色黒金髪。って、万札ってそんなにすんなり出るものなの?私の財布には千円札しか入っていないんだけど。

「違うっ!茶菓子について怒っているんじゃないっ!」

「でしたら…何が非礼に当たったかお教え願いますか?」

「それは…」

色黒金髪は胸ポケットに万札を戻すと会長は浮かない顔で俯いた。

「いえ…なんでも無いです」

そして静かに座った。
生徒会長が黙るから生徒会室はシンッとなった。な、なんか気まずいな…。ちょっと紅茶でも飲んで落ち着こう。うん、そうしよう。
私はティーカップに口をつけた。

「わけの分からんやり取りはその辺にしておけーっ!」

「ふごっ!?」

我がいとこの声が聞こえてきて私は紅茶を噴き出した。

「大丈夫か?」

「え、あ…すみません」

他校の生徒会室にお邪魔しているのに机の上に紅茶を撒き散らしおまけに心配までされて…。私、何やって居るんだろ。
さっき私に声をかけてくれたあの帽子の人が机の上を拭いてくれた。

「ハンカチ使うか?」

「あ、いえ。持っているので」

「そうか」

私は自分のポケットの中からハンカチを取り出してそれを見せた。
ああ、本当恥ずかしい。
私がこんなバカをやっている間に我がいとこの金髪が私たちを此処に招いた理由を説明した。
内容は昨日聞いた通りで合同で文化祭を開くとこのことで。

「とにかく宜しくな。東高の生徒会長さん」

握手をしようと手を出しながらこちらへ向かってくる金髪。会長もそれに応じようと席を立ったが金髪は彼女の横を素通りして隣に座っていたメガネをかけた生徒会役員の所へと行き、

「お互い頑張りましょう」

両肩をポンッと叩いた。おま、会長はその子じゃないよ…!

「会長はあたしだっ!」

「すみませんー!!」

あーあ、殴られている。でも、金髪は咄嗟にガードしている。

「ちっくしょう!何から何までバカにしやがって…!」

フルフルと拳を震わせている生徒会長。
いや、バカにはしてないと思いますが…。ただ、今のは金髪が悪い。

「今度の文化祭は絶対にウチが勝つっ!」

「このりんごちゃん何で怒ってんの?」

「さあ?」

ビシッと指をさして言う生徒会長だが、金髪は色黒金髪(副会長らしい)に呑気に訊ねていた。
いや、お前のせいだから。と思ったが私はツッコまずにカステラを口に入れた。
コイツといとこと思われないために。
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