胡蝶の夢 | ナノ


▽ 第24話

私って本当にバカだなあ。
前に、金髪に偉そうに言ったのに、自分はどうなんだっての。
これじゃあ、もう偉そうに言えないよ。

「これからどうしよう…」

そう言えば荷物とか生徒会室に置きっぱなしだったな。
帰ろうにも帰れない。その辺ブラブラしとくのも限界があるし。
…と、いうか、彼らと離れたらどうやって荷物を取りに行けばいいんだ。
色んな意味で気まずいじゃないか。

「―…忍!」

トボトボと歩いていたら名前を呼ばれて驚いた。
誰かが探しに来てくれたのだろうか。
いや、でも、みんなは会長につきっきりだったから私が居なくなったことに気付かない筈だ。
じゃあ、誰…?

「…とし、ゆき…?」

振り向いたら息を切らして居るとしゆきの姿があった。

「急に居なくなると心配する」

「…ごめん…」

必死に探してくれたのか、としゆきはまだ肩を上下させていた。
そんなとしゆきの姿をとらえるとトクン、トクン、と鼓動が速くなっていく。

「…どうしたんだ」

「え?」

「いつもの忍じゃない」

「そ、そんなことないよ…!」

ほら、元気、元気!と、にっこりと笑って、拳を上げてみるという謎のポーズを取った。
本当に我ながら謎なポーズだ。

「あ、あれ…」

おかしいな。
私、元気なのに。
どうして…

「どうして涙が出てくるんだろう―…」

頬を伝って、ポタリ、ポタリ、と地面に落ちていく涙。

「忍…」

「お、おかしいんだよ。これ。私、別に悲しくもないし、何ともないのにどうして涙が…」

拭いても拭いても涙は止まる様子は無かった。

「ご、ごめんね。としゆき。迷惑ばかりかけて…」

「迷惑だなんて思ってない」

としゆきはそう言って私の涙をそっと拭いてくれた。
優しく。優しく。
それがまた嬉しくて私の涙は更に溢れ出した。

「…りんごちゃんさんのことか?」

「え…?」

会長の呼び名が出て私は思わずドキリとした。

「忍はりんごちゃんさんが俺らに迷惑をかけているって気に病んでいるんだろ?」

「―…っ」

「…忍は彼女が俺らに迷惑がかからないようにって居るつもりだったが結局は何もできなかった。だったら、自分は居る意味ないんじゃないか、と」

「どうして…分かったの」

だってそうでしょ?
私、何も言わずにあの場から消えたし、口では何も言っていない。
それがどうしてとしゆきには分かったの…?

「どうしてか?そうだな…」

としゆきは顎に手を添えて考え込む。

「忍のことだから」

再びトクン、と鼓動が鳴った。
私のことだから分かる。
それって…もしかして私のことを…?
…いやいや、そんなの考え過ぎよ。
としゆきみたいな人が私を好きになるわけない。それに私だって別にとしゆきのことなんて…
あ、あれ…
としゆきのことを考えると身体が火照ってくる。
これってまるで…

(としゆきのこと好きみたいじゃないの…)

そうだったの…?私。

「さて、そろそろ帰るか。暗くなる前に帰らないとモトハル達が心配する」

「あ、ちょっと…」

「大丈夫だ。モトハル達にはこのことは言わない。ちょっと気分が悪くなったみたいだから一緒に休憩してたとでも言っておけば問題ない」

「そうじゃなくて…!」

自分のことを考え過ぎたため、としゆきの真意を聞くことは出来なかった。
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