▽ 第21話
(夢主視点)
「それにしても良かったな。昔一緒に遊んだ奴が誰か分かって」
小学校の頃にいとこの家に遊びに来てた時に知り合った男の子。
夢にも何度も出てきた男の子。
その男の子が真田北高校の生徒会役員の唐沢としゆきということが分かった。
「本当に、よかった…」
あの男の子が唐沢さん…としゆきで本当に良かった。
何で?と聞かれたら上手く答えることは難しいけれど。
多分、昔のことをずっと覚えているのが私だけじゃなかったから、かもしれない。
…としゆきは私を最初に見たときに直ぐに気付いたらしいけれど、なんかそこは負けた気がして悔しい。
「お前、本当に嬉しそうだな」
「え、そ、そうかな…?」
「さっきからずっとニヤニヤしっぱなしだぞ。見てるこっちが恥ずかしいわー」
「そ、そんなことないわっ!」
金髪に言われて私は咄嗟に両頬を抑えた。
私、そんなにニヤニヤしてたか…!?
いや、き、きっと金髪には変なフィルターがかかってたせいでそう見えただけ、もしくは、大袈裟に言っているだけだ。
「そう言ってるわりには顔真っ赤だぞ?」
「う、うるさいっ!」
「否定すればするほど"はい、そうです"って言っているようなもんですぜ?」
金髪はニヤニヤと私をからかってくる。
ったく、さっきからなんだと言うんだ。
一緒に遊んでいた男の子がとしゆきだってことが分かってからずっとこの調子だ。
「……」
「お?どうした?図星で言い返すことも出来なくなったか?」
「―…金髪こそどうしたのさ」
「はい?」
私はピタリと足を止めた。
「なんかずっと変」
「…そ、そんなことないと思うけど?」
「いや、変だよ!さっきから私に執拗に絡んでさ。どうしたんだよ。何かあったの?」
金髪は黙った。
図星をつかれたからなのか、それとも、あえて黙っているのか、その辺は分からないが。
「…俺だって分からねーよ」
「え?」
「…なーんてな。冗談冗談!おっ?まさかびびった?」
「人が折角心配したというのにこの野郎…!」
急に真面目な声を出すからドキっとしたが、直ぐにいつもの金髪の声に戻った。
冗談っぽく笑うものだから私もつい拳を握ってしまった。
「…忍はその調子で居てほしい」
「…え?」
優しい声で言われて驚くと、私の頭の上に、ポン、と手を置かれた。
「忍が嬉しそうな顔をしていると俺も嬉しい。でもな、忍がずっとそんなんだと、俺といつもの調子で話してくれないだろ?」
「なっ…!」
「だから、からかったのかもなー?」
「って…なんで疑問系なのよ!?自分のことでしょ!?」
「さっきも言ったろ?俺だって分からないって」
「……」
この日。
金髪がいつもの金髪に見えず、何処か寂しそうに見えた。
でも、私はそれ以上声をかけることは出来なかった。
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